乾くるみ

乾くるみ：ミステリー作家としての軌跡

乾くるみ氏(1963年生まれ)は、日本の小説家、推理作家として知られています。静岡大学理学部数学科卒業という異色の経歴を持つ男性で、市川尚吾というペンネームで評論活動も行っています。幼少期からミステリー作品に親しみ、中学生の頃には横溝正史や江戸川乱歩といった巨匠の作品、高校時代にはジョン・ディクスン・カーなどの海外ミステリーにも傾倒。並行して創作活動を開始し、大学在学中には江戸川乱歩賞にも応募した経験があります。

大学卒業後はIT企業に就職し、ソフトウェア開発に携わった後、1998年、34歳で『Jの神話』が第4回メフィスト賞を受賞。この作品で作家デビューを果たしました。2作目となる『匣の中』では、竹本健治の『匣の中の失楽』へのオマージュが込められています。3作目の『塔の断章』は、各エピソードが時間軸を超えて配置された実験的な作品で、乾くるみ氏独自の作風が垣間見えます。

2004年に発表された『イニシエーション・ラブ』は、大きな成功を収めました。同年の「このミステリーがすごい！」で第12位、「本格ミステリベスト10」で第6位にランクインし、高い評価を獲得。翌年には第58回日本推理作家協会賞（長編及び連作短編集部門）候補にもノミネートされています。2007年の文庫化を機に、雑誌やテレビ番組で取り上げられる機会が増え、ロングセラーとなり、2014年には100万部を突破しました。2021年には『夫の余命』で第74回日本推理作家協会賞（短編部門）候補に選ばれるなど、現在も精力的に作品を発表し続けています。

作品の特徴とシリーズ

乾くるみ氏の作品には、いくつかの特徴的なシリーズがあります。まず「タロウ・シリーズ」は、タロットカードをモチーフにしたシリーズで、「天童太郎」という人物が共通して登場しますが、各作品は独立した物語となっています。代表作である『イニシエーション・ラブ』もこのシリーズに含まれます。また、「林四兄弟シリーズ」は、林家の兄弟が探偵役を務めるシリーズで、『林真紅郎と五つの謎』や『六つの手掛り』などがあります。他にも「カラット探偵事務所の事件簿」シリーズなど、多様なシリーズを展開しています。

代表作と受賞歴

乾くるみ氏は、多数の作品を発表し、多くのミステリーランキングで上位にランクインしています。『イニシエーション・ラブ』は、その代表作と言えるでしょう。他にも、『リピート』、『セカンド・ラブ』、『嫉妬事件』、『スリープ』、『六つの手掛り』などが、高い評価を受けています。これらの作品は、複雑なトリックや緻密な構成、そして読者の予想を裏切る展開で知られています。また、ミステリー要素に加え、恋愛や人間関係といったテーマも深く掘り下げており、幅広い読者層に支持されています。

映像化作品

乾くるみ氏の作品は、映画やテレビドラマにも多数映像化されています。特に『イニシエーション・ラブ』は、2015年に堤幸彦監督、松田翔太主演で映画化され、話題となりました。『リピート』は、2018年に読売テレビ・日本テレビ系でテレビドラマ化され、韓国でもリメイク版が制作されるなど、高い人気を誇っています。

まとめ

乾くるみ氏は、数学科出身という経歴も相まってか、緻密な構成と巧妙なトリックが特徴的なミステリー作品を発表し続ける作家です。多様なシリーズ展開や映像化作品も多数存在し、今後もその活躍から目が離せません。数々の受賞候補やランキング入りを果たした人気作に加え、その独特の作風や経歴、そして今後の作品に注目が集まります。

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