イブキジャコウソウ

イブキジャコウソウ（伊吹麝香草、学名：Thymus quinquecostatus）は、シソ科イブキジャコウソウ属に分類される小低木です。別名としてイワジャコウソウ、ナンマンジャコウソウとも呼ばれます。

特徴

イブキジャコウソウは、細い茎が地表を這うように広がり、よく枝分かれします。茎には短い毛が生えており、直立すると高さは3cmから15cm程度になります。葉は茎に対生し、卵形から狭卵形で、先端は丸みを帯びています。葉の大きさは長さ5mmから10mm、幅3mmから6mm程度で、縁は滑らかです。植物全体に独特の芳香があります。

花期は6月から8月で、枝の先端に短い花穂をつけます。花冠は紅紫色で唇形をしており、上唇はわずかに2つに裂けて直立し、下唇は3つに裂けて開きます。萼は筒状の鐘形をしており、これも唇形です。雄蕊は4本あります。果実は分果で、やや平らな形をしています。

和名の由来は、滋賀県の伊吹山に多く自生し、芳香があることにちなんでいます。

分布と生育環境

イブキジャコウソウは、日本では北海道、本州、九州に分布しており、海岸から高山帯までの日当たりの良い岩場に生育します。海外では、朝鮮半島、中国、ヒマラヤ山脈にも分布しています。

変種と品種

イブキジャコウソウには、いくつかの変種や品種が知られています。

シロバナイブキジャコウソウ (Thymus quinquecostatus Celak. f. albiflorus H.Hara): 花が白い品種です。
ハマジャコウソウ (Thymus quinquecostatus Celak. f. maritimus H.Hara): 海岸に生育する品種です。
ヒメヒャクリコウ (Thymus quinquecostatus Celak. var. canescens (C.A.Mey.) H.Hara): 葉に粗い毛があり、日本の北アルプスに稀に見られます。アジアでは、樺太やウスリーにも分布しています。

ギャラリー

（ここに画像が入る想定）

参考文献

佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他編『日本の野生植物 草本Ⅲ 合弁花類』（1981年）平凡社
豊国秀夫『日本の高山植物』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、1988年9月、192-193頁。ISBN 4-635-09019-1。
米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」（YList）

関連項目

「イブキ」を冠する和名の種
タイム (植物)

もう一度検索