イブツァン

イブツァンは、旧約聖書の『士師記』に登場するイスラエルの士師の一人です。彼の名前は、ヘブライ語では「אּבְצָן (Ibtsan)」、古代ギリシア語では「Εβεσάν」と表記されます。イブツァンに関する記述は、『士師記』12章8節から10節に限定されており、彼の生涯や業績に関する詳しい情報は限られています。

イブツァンはベツレヘム出身とされていますが、このベツレヘムがエフラタのベツレヘム（ユダ族の領地）ではなく、ゼブルン族の領地にあったベツレヘムである可能性が指摘されています。これは、当時のイスラエルには複数のベツレヘムが存在したことを示唆しています。

『士師記』の記述によれば、イブツァンは30人の息子と30人の娘を持っていました。これは彼が多くの妻を娶っていたこと、そして非常に裕福な人物であったことを示しています。当時の社会では、多くの子供を持つことは富と繁栄の象徴であり、イブツァンの地位と影響力の大きさを物語っています。さらに、彼は息子たちのために、よその土地から30人の嫁を迎え入れたと記述されています。これは、彼の家族が広範なネットワークを持ち、社会的にも大きな影響力を持っていたことを示唆しています。

イブツァンは7年間、イスラエルを裁いたとされています。士師とは、イスラエルの民が困難に直面した際に、神によって立てられた指導者のことで、軍事的なリーダーシップだけでなく、民を裁き、神の律法を教える役割も担っていました。イブツァンの具体的な業績は記録されていませんが、彼も他の士師たちと同様に、イスラエル社会の安定と秩序の維持に貢献したと考えられます。

イブツァンは、その生涯をベツレヘムで終え、そこに葬られたと記されています。彼の死後、イスラエルは再び混乱の時代に入り、次の士師へとその役割が引き継がれていくことになります。

イブツァンに関する記述は少ないながらも、彼の人生は当時のイスラエル社会における裕福な士師の典型的な姿を映し出しています。彼の物語は、士師時代のイスラエル社会における家族、富、権力の重要性を理解する上で、重要な手がかりとなります。

参考文献
聖書語句は『新共同訳聖書』 日本聖書協会による。

関連項目
聖書の登場人物の一覧
士師記

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