イプソスの戦い

イプソスの戦い

イプソスの戦い（Battle of Ipsus）は、紀元前301年にフリュギア地方のイプソス（現在のトルコ中西部）で行われた戦闘です。これはディアドコイ戦争における最大の会戦であり、アレクサンドロス大王の帝国が再統一されることを不可能にしました。この戦いの結果、帝国の分裂が確定したと言われています。

背景

アレクサンドロス3世（大王）の死後、彼の権力を巡って有力な武将たちの間で激しい争いが繰り広げられました。この争いはディアドコイ戦争と称され、非常に混沌とした状況でした。紀元前311年にはカッサンドロス、アンティゴノス1世、プトレマイオス、リュシマコスの四武将が一時的な講和を結びましたが、アレクサンドロスの血統がほぼ絶えた紀元前308年以降、彼らは自ら王を名乗り争いを再開しました。

当時、最も力を持っていたのはアンティゴノスでした。彼はエーゲ海の制海権を確保し、自らの勢力を拡大していました。しかし、この状況に対抗すべく、カッサンドロス、プトレマイオス、リュシマコスたちはセレウコスを加え、アンティゴノスに対する連合を形成しました。アンティゴノスはこれを阻止すべく、連合軍との決戦に臨むことになります。

戦闘の経過

戦闘では、アンティゴノス軍は右翼に彼の息子デメトリオス1世が指揮する精鋭の騎兵部隊と軽装歩兵を配置し、中央にはアンティゴノス自身が陣取っていました。対するセレウコス＝リュシマコス連合軍は、圧倒的な数の戦象を前に並べ、戦闘を開始します。

デメトリオスがアンティオコスに攻撃を仕掛けると、彼は後退する敵を追撃しました。その隙に連合軍はアンティゴノスの本隊に攻撃を仕掛け、戦象がデメトリオスの部隊とアンティゴノスの本隊の間に進出します。この状況でデメトリオスは敵の戦象に阻まれ、アンティゴノスと合流することができず、最終的にアンティゴノスは投槍を受け戦死します。ここにおいて、デメトリオスは残された兵士たちを率いて撤退を余儀なくされました。

この戦いによって、ディアドコイ戦争の最大の会戦はセレウコス＝リュシマコス連合軍の勝利で終わりました。

戦後の情勢

勝者たちはアンティゴノスの所領を分割し、エジプトはプトレマイオスが、トラキアと小アジアはリュシマコス、シリアとその東方地域はセレウコス、マケドニアはカッサンドロスがそれぞれ統治する形となりました。このように四つの王国が対立し、アレクサンドロス帝国の分裂が決定しました。

特にセレウコスは多くの領地を手に入れ、その勢力を拡大させますが、プトレマイオスやリュシマコスに警戒され、彼らとの対立が生じました。また、彼は敗れたデメトリオスと連携する道を選び、デメトリオスは復権を果たします。

数年後、カッサンドロスの死によってマケドニアでは王位継承争いが発生し、その混乱を利用してデメトリオスが王位に就くものの短期間で放逐されるという状況が続きました。最終的には、彼の息子であるアンティゴノス2世が紀元前276年にマケドニア王として即位し、アンティゴノス朝が成立します。この時期、リュシマコスはセレウコスに敗れ、王国を失っています。

このようにイプソスの戦いは、後のヘレニズム時代における三大王国、アンティゴノス朝マケドニア、セレウコス朝シリア、プトレマイオス朝エジプトの形成に重要な影響を与えました。

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