イヤーワーム

イヤーワームとは

イヤーワーム（英: earworm）とは、特定の楽曲やメロディの一部が心の中で繰り返し再生される現象を指します。この現象は「音楽が頭にこびりつく」と表現されることが多く、多くの人々が経験するとされています。この現象はドイツ語の「Ohrwurm」から名付けられ、その後、シンシナティ大学の研究者ジェイムズ・ケラリスとダニエル・レビティンによって広まりました。

イヤーワームの一般的な特性

研究によると、約98%の人々がイヤーワームの経験を持ち、その経験は状況によって異なるものの、ほぼ全員が何らかの形でこの現象に影響されます。性別による差異も観察されています。男女ともにイヤーワームを経験する頻度は同じですが、女性は男性よりも長い期間、また強い不快感を伴ってイヤーワームを感じる傾向があります。

精神分析の観点からは、テーオドール・ライクがこの現象を「ホーンティング・メロディ」と呼ぶなど、精神的な力学についても研究が進んでいます。2003年には、神経科学者でありピアニストでもあるショーン・ベネットによって「Musical Imagery Repetition（音楽的イメージの反復）」という用語が提唱され、2007年にはオリバー・サックスが「Involuntary Musical Imagery（自発的でない音楽のイメージ）」を提唱しました。

イヤーワームと強迫性障害

強迫性障害を持つ人々は、イヤーワームによる問題を多く訴えることがあります。この現象は時に強迫観念として働き、気になるメロディが頭の中で繰り返されてしまうことがあるため、その影響を軽減するために薬物治療が有効であると示唆されている研究もあります。ただし、音楽幻聴やendology（幻聴を伴う深刻な症状）とは異なり、イヤーワームは実際に音楽が聞こえているわけではありません。これは重要な点です。

メディアにおけるイヤーワームの紹介

イヤーワームはメディアでも取り上げられています。たとえば、英BBC 6 Musicのラジオ番組『Shaun Keaveny Breakfast Show』では、リスナーに起床時に頭に残っていた曲を電話で尋ね、その日の話題として取り上げるというコーナーがあります。このように、イヤーワームはエンターテインメントのひとつの要素にもなっています。

フィクションの中のイヤーワーム

イヤーワームは、フィクション作品においても取り上げられています。1956年、アーサー・C・クラークは短編小説「究極の旋律」において、この現象をサイエンスフィクション的に取り扱い、その結果としてさまざまな影響を描写しました。フリッツ・ライバーの1959年の作品「ラン・チチ・チチ・タン」では、強大なイヤーワームのリズムが人間文化を席巻する様子が描かれています。また、アルフレッド・ベスターの『分解された男』では、イヤーワームを利用して自らの思考を偽装しようとするキャラクターの物語が核となっています。

結論

このようにイヤーワームは、人々の生活において頻繁に起こる現象であり、心理学的、文化的、さらにはフィクションにおいても多様な形で扱われています。イヤーワームがどのように私たちの生活や心に影響を与えるのか、さらに研究を重ねることによって、その本質や関連性が明らかになることが期待されます。

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