イラガ

イラガ（刺蛾）とは

イラガ（Monema flavescens）は、チョウ目イラガ科に属する昆虫の総称です。地方によって様々な呼び名があり、「蜂熊」「オキクサン」「シバムシ」など数十種類もの異名を持ちます。特に幼虫は毒針を持ち、触れると激しい痛みを引き起こすことで知られています。

イラガの生態

幼虫

イラガの幼虫は、通常7月から8月頃にかけて出現し、多い年には10月頃にも見られます。体長は約25mmで、ずんぐりした体に多数の棘が生えています。この棘には毒があり、触れるとハチに刺されたような激しい痛みを伴います。幼虫は様々な樹木の葉裏に集団で生息しており、特に落葉広葉樹を好みます。

繭

終齢幼虫は、越冬のために特徴的な繭を作ります。この繭は白く固い卵のような形状で、表面に茶色の線が入っています。カルシウムを多く含み、日本の昆虫が作る繭の中で最も硬いと言われています。春になると繭の中で蛹化し、6月頃に成虫となって羽化します。羽化時には繭の上部が蓋のように開き、この様子から「スズメノショウベンタゴ」とも呼ばれることがあります。また、この繭は釣り餌（特にタナゴ釣り用）として使われる際、「玉虫」と呼ばれることもあります。

成虫

イラガの成虫は無毒で、光に誘われて飛来します。口吻が退化しているため、成虫は何も食べません。成虫の開張は約30mmで、翅には黄色と橙色の特徴的な模様があります。

イラガの形態

幼虫

幼虫は別名「イラムシ」とも呼ばれ、鮮やかな緑色や薄茶色をしており、ウミウシのような形状をしています。体表には毒針が生えており、この毒針に触れることで痛みを感じます。

成虫

成虫は、翅に黄色と橙色の模様があり、開張は30mm程度です。成虫は口吻が退化しているため、何も食べません。

虫刺被害と駆除

日本には17種類ほどのイラガ類が生息しており、その幼虫は全て有毒です。イラガの卵は葉の裏側に20～30個がまとめて産み付けられ、孵化した幼虫は群れで行動します。卵の殻や種類によっては繭にも毒針が付着しているため、注意が必要です。

イラガに刺されると、毒針から毒液が注入され、激しい痛みを引き起こします。死骸であっても毒針は残っており、触れると痛みを伴います。刺された直後に激しい痛みが走り、赤みや腫れ、水疱状の炎症が生じることがあります。痛みは1時間以上、かゆみは1週間程度続くこともあります。症状が重い場合や目に入った場合は、速やかに医療機関を受診してください。

刺された場合の対処法

刺されたら、まず流水で毒液と棘を洗い流し、粘着テープなどで棘を除去します。その後、市販の抗ヒスタミン剤軟膏やステロイド外用薬を塗布します。アンモニア水は効果がありません。

駆除方法

イラガは5月中旬から8月下旬にかけて発生するため、早期の駆除が重要です。駆除には、アセフェート、フェニトロチオン、マラチオン、ピリミホスメチル、ペルメトリンなどの殺虫剤を使用します。これらの殺虫剤を規定の濃度に希釈し、7日間隔で数回、発生場所周辺に散布します。

イラガは、サクラ、梅、柿、梨、リンゴなどの果樹や、椿、サザンカ、柳、楓、ケヤキなど、様々な樹木に発生します。街路樹や公園などでも大発生することがあり、通行人や子供たちへの被害が懸念されるため、自治体も定期的な薬剤散布や剪定を行っています。

近縁種

イラガの仲間には、ナシイラガ、アオイラガ、アカイラガ、ヒメクロイラガなどがいます。これらの種も同様に幼虫が毒針を持っているため、注意が必要です。特に、食樹の樹幹についている繭はヒロヘリアオイラガのものであることが多いとされています。ヒロヘリアオイラガの繭には毒があるため、さらに注意が必要です。

まとめ

イラガは幼虫の毒針による被害が深刻な昆虫です。発生時期や生態を理解し、適切な対処や駆除を行うことで、被害を最小限に抑えることができます。特に、幼虫を見つけた場合は、絶対に素手で触れないように注意しましょう。

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