イレブン (漫画)

イレブン

『イレブン』は、七三太朗氏が原作を、高橋広氏が作画を手がけた、日本のサッカー漫画です。1985年5月号から2000年1月号まで『月刊少年ジャンプ』（集英社）で連載され、単行本は全43巻、文庫本は全7巻が刊行されています。

概要

主人公の青葉茂は、元日本代表サッカー選手の青葉洋介を父に持ちます。父の遺志を継ぎ、サッカー未経験ながらも武蔵台高校でサッカーを始め、ユース代表、ブラジル留学、プロサッカー選手へと成長していきます。最終的には日本代表としてFIFAワールドカップ出場を目指す、というストーリーです。

物語は、無名の主人公が努力と根性で周囲に認められ、新たなステージへと進んでいくという、王道の展開で進みます。しかし、中盤以降は必殺技である「ブレ球」（現代でいう「無回転シュート」と同様の原理）を多用する傾向が強くなります。

作者の高橋広氏は、漫画家のちばあきお氏のアシスタント出身であり、その絵柄はちば氏の素朴なタッチを受け継いでいます。

作品タイトルは『イレブン』ですが、作中にそのタイトルにまつわるエピソードは特にありません。主人公である青葉茂の成長に焦点が当てられており、彼自身も背番号に特にこだわりを持つ描写はありません。作中で「11」という数字が意識されるのは、「リオ・ガルシアFC編」で背番号ではなく「イレブン」と呼ばれる場面くらいです。

ストーリー

高校編

青葉茂は、埼玉県の武蔵台高校に入学し、父の遺志を継いでサッカー部に入部します。サッカー未経験ながらも、陸上競技で鍛えた脚力を活かしてレギュラーの座を獲得。同級生の谷や主将の椿らと共に、県大会予選に出場します。弱小チームである武蔵台は、強豪の筑紫高校を破ってブロック代表となりますが、県大会1回戦の相手は、堅守とラフプレーが特徴の真誠館高校でした。茂たちは真誠館のパワーに苦戦を強いられますが、粘り強い攻防を続け、PK戦の末にかろうじて勝利を収めます。しかし、真誠館戦の疲れもあり、武蔵台は2回戦で敗退。茂は予選6試合で18得点という成績を残します。

世界ユース大会編

高校2年生になった茂は、1年時の県大会での活躍が認められ、高校選抜強化合宿に招集されます。合宿には、全国大会得点王の紅林、同アシスト王の沢野、ブラジル帰りの浦部といった名手が揃っていました。茂は参加早々から実力差を痛感しますが、ユース代表総監督の米山が見守る中、彼らに追いつこうと個人練習に励みます。そして、合宿最後の最終選抜テストに挑み、持ち前の根性と練習の成果が実を結んで合格。日本ユース代表に選ばれます。

韓国のソウルで行われた世界ユース大会に出場し、1回戦では金順天を擁する韓国、2回戦ではオランダに勝利します。準々決勝は、優勝候補のブラジルとの対戦となり、ホセ・ケーナを擁するブラジルの攻撃に圧倒されますが、茂はこれまで練習を続けてきた必殺技「ブレ球」を駆使して勝負を挑みます。試合は日本が1点差に詰め寄る健闘を見せますが、試合終了間際のPKを茂が外し、3-4で敗れます。

リオ・ガルシアFC編

世界ユース終了後、高校に戻った茂は県大会優勝を果たし、全国大会出場を決めます。しかし、ユース代表監督の米山から、ブラジルのプロ養成機関「リオ・ガルシアFC」への留学を勧められます。全国優勝の夢との間で悩みますが、親友の谷の後押しもあり、ブラジルへと旅立ちます。ディアボ島での3か月の基礎訓練を、チームメイトのジョゼ佐藤の協力や持ち前の成長能力を発揮して乗り越えると、南米各地を転戦する実戦ロードでは、世界ユースで対戦したケーナやスター選手のボボーを擁するサンパウロFCとの対戦を通じて実力を磨いていきます。そして、実戦ロードを耐え抜いた選手同士による、ボリビアの高地ラパスでの最終戦に勝利し、卒業を決めます。

ナショナルカップ編

リオガルシア卒業後の進路に迷っていた茂ですが（元々プロ志望ではなかった）、ジョゼの誘いにより、米山監督が秘密裏に進めていたというワールドカップ制覇のための強化チームに参加し、浦部や沢野と再会します。キャプテンに任命された茂は、自己主張の強いメンバーをまとめられるのか悩みますが、ジョゼの後押しもあり、持ち前の努力する姿勢でチームを牽引しようとします。1ヶ月後、ヨーロッパ主催の「ナショナルカップ（架空の大会）」に特別参加。1回戦はホスト国のイングランドと対戦し、レネカー、ゲスコインらを相手に健闘します。辛くもイングランドに勝利した日本は、次戦でイタリアを迎えます。ベアリ、バラージ、ゼンバらを相手に奮戦しますが、PK戦の末に敗退します。

Jリーグ編

帰国後、Jリーグからの要望もあり、ワールドカップ制覇を目的としたチームは一時解散。Jリーグに散っておのおの技を磨くことになります。しかし、茂はリオ・ガルシアFC時代のダメージとイタリア戦でのダメージが重なり、骨、腱、靭帯を損傷しており、Jリーグ参加は危ぶまれていました。手術をうけたあと、他のメンバーの活躍を尻目にリハビリに専念。治療後、北海道の「北海道ポラリス（架空チーム）」に入団し、南雲と再会します。開幕戦のベルリィ戦では美浦、アンタレス戦ではヂーコと対戦し、その素質を見込まれます。ポラリスは第1ステージを12勝8敗の5位という成績で終えます。

OA編

茂は鹿島のヂーコから、アフリカのOA（アフリカサッカー連合）への入団を勧められます。Jリーグ第1ステージ終了後、OAに加入した茂は、ユース時代の戦友であるケーナ（ブラジル）とキム（韓国）に再会します。OAはM1(正メンバー)とM2(準メンバー)に分けられており、青葉はM2としてケーナ達と共に見事M1に勝利します。OAでM1に昇格した茂は「南米オールスター」と対戦。そこで米山監督の息子、ハルオと対戦します。

ワールドカップ編

OAで7か月プレイした後、ハルオと共にワールドカップ日本代表招集のため、一旦帰国した茂はジョゼ、浦部、紅林らと再会します。これにJリーグでプレーする美浦、山中、田中らを加え、ワールドカップ出場に臨みます。
アジア予選、本大会グループリーグ、決勝トーナメントを経て、日本の最終成績は4位、優勝はブラジルという結果で物語は幕を閉じます。

大会後、紅林や田中が欧州のクラブへ移籍する中、茂は欧州からのオファーを断りブラジルのフラメンゴに入団。ジョゼ、ハルオも茂と対戦するためにブラジルのクラブに入団し、共にブラジルに向かうところで物語を終えます。

(登場人物、書誌情報、脚注は省略)

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