ラパス

ボリビアの首都ラパス：3600mの高地都市の物語

ボリビア多民族国の首都ラパスは、標高3600mを超えるアンデス山脈の谷間に位置する、世界でもユニークな都市です。憲法上の首都はスクレですが、行政・立法府がラパスに置かれ、事実上の首都として機能しています。この状況は、1899年の「連邦革命」によって、保守党から自由党への政権交代が起きたことに由来します。革命後、議会と政府はスクレからラパスに移転されましたが、最高裁判所は現在もスクレに残っています。

ラパスの歴史：インカ帝国から独立まで

1548年、スペイン国王カルロス1世の命により、ペルー征服終結を記念して建設されたラパスは、当初は「ヌエストラ・セニョーラ・デ・ラ・パス市（我らが平和の母の街）」と呼ばれていました。建設地は当初ラハという高地でしたが、風の影響を避けるため、現在の谷底に移されました。1549年には、公共区域や広場、官庁街、大聖堂などの都市計画が設計され、ムリーリョ広場を中心とした街づくりが始まりました。

スペイン統治時代、ラパスはスペインの支配下にありましたが、1781年にはトゥパク・カタリ率いるアイマラ人の反乱が勃発、教会や政府施設が破壊されました。その後もインディオによる包囲が起こり、この地でエケコの伝説が生まれたといわれています。

1809年にはスペインからの独立を目指すラパス革命が勃発し、ペドロ・ドミンゴ・ムリーリョは「ボリビア革命は、誰も消すことのできない独立の火を灯すことである」と宣言しました。ムリーリョはその後処刑されましたが、彼の名は広場の名前に残されています。1825年のアヤクーチョの戦いでのスペイン軍敗北後、ラパスは「アヤクーチョの平和」を意味するラ・パス・デ・アヤクーチョと改名されました。

1898年には事実上の首都となり、スクレは憲法上の首都として残されました。これは、ポトシ銀山の衰退と、錫を産出するオルロ近郊やラパスを基盤とする自由党勢力の台頭を反映しています。

ラパスの地理と気候：すり鉢状の盆地都市

ラパスはすり鉢状の盆地に広がる都市で、中心部の標高は約3600mです。この標高のため、「雲の上の都市」とも呼ばれています。高所得者はすり鉢の底、低所得者は縁の部分に居住するという特徴があります。近年は人口増加に伴い、隣接するエル・アルト市にまで都市部が拡大しており、標高差は700mにも及びます。

水資源は豊富ですが、インフラ整備の遅れから断水も頻発します。特に急激な人口増加地域では、上下水道などのインフラ整備が追いついておらず、衛生的な水の不足が問題となっています。また、下水道整備が不十分なため、大雨による冠水も発生しています。気候は高山気候で、独特の環境となっています。

ラパスの施設と文化：歴史と現代が交差する街

大統領官邸、国会議事堂、中央省庁、各国大使館などがラパスに集中しており、最高裁判所を除く首都機能はほぼすべてラパスにあります。ムリーリョ広場周辺には、ラパス大聖堂などの歴史的建造物が残っています。近年はプラド通りが商業の中心地として発展し、近代的な高層ビルが建ち並んでいます。

観光の中心は、聖フランシスコ教会とサガルナガ通りです。ここでは、アルパカや羊毛製品、銀製品、民族楽器などが販売されています。「魔女の市場」と呼ばれる通りでは、伝統的な儀式で使われるハーブや人形、リャマの胎児のミイラなどが販売されています。ハエン通りには、スペイン統治時代の雰囲気を残す古い町並みと博物館が並びます。

毎年2月頃にはカーニバル、8月頃にはグラン・ポデール祭が開催され、プラド通りなどでパレードが行われます。1月24日にはアラシタの祭も開催されます。

ラパスの生活：高地特有の環境と生活

ラパスでは、希薄な空気と日干しレンガ（アドベ）の家が多いことから火災は少ないとされています。しかし、消防署や消防車は存在します。高地特有の現象として、タバコの火が消えやすい、ビールが泡立ちやすい、輸入品が膨張するなどがあります。

高山病にかかりやすいことから、旅行者は注意が必要です。コカ茶は高山病の症状緩和に効果があるといわれています。急な坂が多いことから、住民も呼吸困難を感じることがあります。

ラパスの交通：ロープウェイと国際空港

ラパスのエル・アルト国際空港は、隣接するエル・アルト市に位置し、標高差は約500mあります。ラパス市内からは螺旋状の高速道路で約30分ほどでアクセスできます。国内外の主要都市と結ばれており、2014年にはラパスとエル・アルトを結ぶロープウェイ「ミ・テレフェリコ」が開業しました。

まとめ：魅力と課題の共存

ラパスは、歴史、文化、自然が織りなす魅力的な都市です。しかし、急激な人口増加によるインフラ整備の遅れや、高山病といった課題も抱えています。今後も、これらの課題への対応が重要となるでしょう。

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