イレブンス・アワー (アメリカ合衆国のテレビドラマ)

『イレブンス・アワー』（Eleventh Hour）は、イギリスで制作された同名ドラマを基にしたアメリカのテレビシリーズです。敏腕プロデューサーとして知られるジェリー・ブラッカイマーが製作総指揮を務め、CBSネットワークで2008年に放送されました。日本では2010年にワーナーTVを通じてオンデマンド配信されています。

物語の主人公は、政府の特別顧問として活動する異色の天才、生物物理学者のジェイコブ・フッド博士（ルーファス・シーウェル）。彼は、通常の犯罪捜査では太刀打ちできない、高度な科学知識や最先端技術の悪用が絡む複雑な事件解決に駆り出されます。そのフッド博士の護衛とサポートを務めるのが、冷静沈着なFBI特別捜査官レイチェル・ヤング（マーリー・シェルトン）です。科学と捜査の専門家という、異なる視点を持つ二人がコンビを組み、全米各地で発生する異常な事件の真相に迫っていきます。

ドラマの各エピソードは完結型で、取り扱うテーマは多岐にわたります。例えば、第1話「Resurrection（リザレクション）」では、ワシントン州で発見された複数の胎児遺体が全て同じDNAを持つという驚愕の事態から、非合法なクローン技術の存在が示唆されます。第2話「Cardiac（カーディアック）」では、ジョージア州で健康な少年たちが原因不明の急性心不全で次々と命を落とす事件が発生。調査を進める中で、その土地には本来生息しないはずの生物が関係している可能性が浮上し、心臓（cardiac）に関わる科学的な要因が追求されます。

また、カリフォルニア州で発生した集団食中毒を思わせる麻痺症状の事件（第3話「Agro/アグロ」）では、農業（agro）分野における新たな農薬の危険性が暴かれます。重度の自閉症を抱える子供たちが姿を消し、後に特定の分野で驚異的な才能を示すサヴァン症候群の兆候を示して見つかるという異常な事件（第4話「Savant/サヴァン」）では、脳科学や遺伝子が焦点となります。さらに、ペンシルベニア州で根絶されたはずの天然痘ウイルスが発見される事件（第5話「Containment/コンテインメント」）では、ウイルスの封じ込め（containment）というテーマの下、人工的な新種ウイルスの流出経路が追われます。

このように、『イレブンス・アワー』は、クローン、遺伝子操作、ウイルス、脳科学、環境汚染といった、現代科学の進歩に伴って生まれうる新たな脅威を題材としています。それぞれの事件は、専門用語の意味（例：第6話「Frozen」＝凍結、第8話「Titans」＝巨人、影響力ある人物、第9話「Flesh」＝肉、第17話「Olfactus」＝嗅覚の、第18話「Medea」＝魔女）もエピソードタイトルに絡めながら展開されます。

科学的な知見とFBIの捜査力が融合することで、従来の捜査手法では解明できない複雑な事件の核心に迫る過程が見どころです。フッド博士の豊富な知識と独特な視点、そしてレイチェル捜査官の実践的なスキルと行動力。この対照的な二人のやり取りもドラマに深みを与えています。科学の光と影を描き出し、現代社会が直面しうる潜在的な危険性をスリリングに描いたシリーズと言えるでしょう。

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