イレブン・ミニッツ

イレブン・ミニッツ：運命の11分間

『イレブン・ミニッツ』は、2015年に公開されたポーランドとアイルランド合作のスリラー映画です。監督と脚本を手掛けたのは、数々の名作を生み出してきたイエジー・スコリモフスキ。ワルシャワを舞台に、午後5時から5時11分までのわずか11分間に、街の様々な場所で起こる出来事を複数の登場人物の視点から同時進行で描き出します。第72回ヴェネツィア国際映画祭にも出品された、高い評価を得た作品です。

交錯する運命：物語の展開

物語は、時計塔が午後5時の鐘を打つことから始まります。それぞれの登場人物は、互いに交差する人生を歩み、予期せぬ出来事によって運命の歯車が狂い始めるのです。

まず、女優のアニャは、映画監督であるリチャードとホテルで出会います。役の交換条件として、リチャードから不適切な要求を突きつけられ、アニャは困惑します。一方、アニャの夫であるヘルマンは、妻の姿が見当たらず、ホテルへと急ぎます。

その街では、様々な出来事が同時多発的に起こります。ホットドッグ屋のおじさんは、路上で様々な人々と出会い、それぞれの人生の一片を垣間見ます。その中には、出所したばかりの少女や、元恋人と別れた女性、そして息子が結婚する日を控えるおじさん自身も含まれます。

バイク便の男は、配達中にドラッグの影響で錯乱状態に陥り、父親であるホットドッグ屋のおじさんと偶然再会します。登山家の男女は、ホテルの部屋でポルノビデオを見ながら休憩し、その後、男は高層ビルの工事現場へ、女はバス停へと向かいます。画家は川原で絵を描いていると、橋から人が飛び込む事件を目撃します。少年は質屋に押し入りますが、店主が亡くなっているのを発見し、何も盗らずにその場を去ります。さらに、医者は、暴れる男と産気づいた女性がいる部屋に駆けつけます。

これらの出来事が、互いに複雑に絡み合い、やがて一つの悲劇へと導かれます。アニャはリチャードとのトラブルの中でバルコニーから転落。それに巻き込まれる形で、高層ビルの作業員や救急車、バスまでもが事故に巻き込まれていきます。

物語の最後に、無数の監視カメラ映像が映し出されるマルチスクリーンに、事件の全貌が黒い点として刻まれます。それはまるで、避けられなかった運命の連鎖を示しているかのようです。

緻密な構成と衝撃の結末

『イレブン・ミニッツ』は、わずか11分間の出来事を複数の視点から描くことで、人間の業や運命の残酷さを浮き彫りにします。それぞれの登場人物の人生が、まるでパズルのピースのように複雑に絡み合い、衝撃的な結末へと収束していく様は、観る者を圧倒する力を持っています。

スコリモフスキ監督は、自身の個人的な経験や悪夢から着想を得て、この作品を制作したと言われています。その背景には、人生における喪失や絶望、そして運命の不可解さに対する深い洞察が感じられます。

ワルシャワの街並みを舞台に、様々な場所での撮影が行われ、古さと新しさ、秩序と混沌が混在する街の雰囲気が、物語に独特のリアリティを与えています。

評価と反響

『イレブン・ミニッツ』は、批評家からも高い評価を受けており、ヴェネツィア国際映画祭への出品や、キネマ旬報ベストテンでの上位ランクインなど、多くの賞を受賞しました。しかし、アカデミー賞外国語映画賞へのノミネートは逃しています。Metacriticでは平均値51点、Rotten Tomatoesでは支持率67%と、賛否両論ある評価となっています。

『イレブン・ミニッツ』は、短い時間の中に凝縮された重厚なドラマと、衝撃的な結末が特徴の、忘れがたい映画体験を与えてくれる作品です。人間の業や運命の残酷さを改めて考えさせられる、一級のスリラー映画と言えるでしょう。

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