イロケレシア

イロケレシア（Ilokelesia）は、白亜紀後期の南アメリカ大陸に生息していた肉食恐竜です。アベリサウルス類という恐竜のグループに属しており、そのユニークな特徴から古生物学者の注目を集めています。

1991年、アルゼンチンのネウケン州にあるネウケン層群リオ・リマイ累層から、イロケレシアの化石が発見されました。発見された化石は断片的ですが、頭骨の一部、背骨、そして四肢の骨が含まれており、これらの断片から、この恐竜の姿形、そしてその進化上の位置を推測することが可能となっています。1998年には、古生物学者コリアらによって正式にイロケレシアとして記載されました。

属名である「イロケレシア」は、マプチェ語に由来しています。「ilo」は「肉」、「kelesio」は「トカゲ」を意味し、この恐竜が肉食性のトカゲのような生き物であったことを示唆しています。タイプ種の種小名である「aguadagrandensis」は、化石発見地であるAguada Grandeにちなんで名付けられました。

イロケレシアは、中型の獣脚類恐竜でした。他のアベリサウルス類とは異なる特徴をいくつも持っています。特に頭骨、そして背骨の形状は非常に特徴的です。例えば、頭骨を構成する骨の一つである方形骨や後眼窩骨は、独特の形状をしています。また、背骨の椎骨にも、他のアベリサウルス類には見られない構造が確認されています。具体的には、頸椎（首の骨）の突起が小さく、胴椎（胴体の骨）には側腔（pleurocoels、骨の内部にある空洞）がありません。

初期の研究では、イロケレシアの後眼窩骨がアベリサウルス科とノアサウルス科の両方の特徴を併せ持っていることから、アベリサウルス類の中でも比較的原始的な種であると考えられていました。しかし、方形骨の開口部やT字型をした後眼窩骨といった特徴は、アベリサウルス類の祖先的な特徴を残している可能性を示唆しています。

その後、さらなる研究が行われ、イロケレシアはアベリサウルス科の中でもカルノタウルス亜科（Carnotaurine）に属する、ブラキロストラ（brachyrostra）というグループに分類されるようになりました。この分類は、イロケレシアの骨格の特徴を詳細に分析した結果に基づいています。

イロケレシアの発見と研究は、アベリサウルス類の進化の歴史を理解する上で重要な貢献を果たしています。その独特な特徴は、このグループの多様性と進化の過程を解き明かすための重要な手がかりとなるでしょう。今後の研究により、イロケレシアに関するさらなる知見が得られることが期待されます。

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