イロヴァイスクの戦い

イロヴァイスクの戦い

2014年8月、ウクライナ東部のドネツィク州イロヴァイスク市で発生した戦闘。
ウクライナ軍とその支援部隊が、親ロシア派勢力の支配下にあった同市の奪還を試みましたが、ロシア連邦軍の介入により、ウクライナ軍は包囲され、甚大な被害を被りました。

戦闘の経緯

背景:
ウクライナ軍は、ドネツクとルハンスク間の反政府勢力の補給路を遮断し、ロシアとの国境地帯を確保しようとしていました。
7月には、ドネツク州のD地区がロシア本土からの砲撃に晒されていました。

ウクライナ軍の初期作戦:
7月下旬、ウクライナ軍はサヴールモヒラの丘周辺を解放し、シャフタールスクへの攻撃を開始しました。
第25空挺旅団がペトロパブリフカとOrlovo Ivanivkaを制圧。
他の部隊もトレズやスニジネを通過し、ミウシンスクを目指しましたが、連絡が途絶えるなど連携がうまくいきませんでした。

ロシア軍の関与:
8月6日、ウクライナはロシア軍の侵攻の可能性を警告しました。
8月7日、ウクライナ軍が初めてイロヴァイスクを攻撃しましたが、反政府軍の抵抗に遭い膠着状態になりました。
8月11日、ウクライナのメディアは、この攻撃を成功と報道しましたが、その目的と成果は不明確です。

ウクライナ軍のイロヴァイスク進攻

市街戦:
8月18日、ウクライナ軍はイロヴァイスク市内への突入を試みましたが、失敗しました。
8月18-19日夜、ドンバス大隊が主導した夜間攻撃で市役所に国旗を掲揚しましたが、その直後に部隊長が負傷しました。
ウクライナ軍は、反乱軍を掃討し、イロヴァイスクの約半分を支配下に置いたと発表しました。
8月20日、ウクライナ軍はイロヴァイスクを完全に占領したと発表しましたが、ドネツク人民共和国側はこれを否定しました。
その後、ウクライナ軍は反政府軍の反撃にあい、市街戦が勃発しました。
8月21日、内務省はイロヴァイスクでの対テロ作戦開始後、敵の義勇兵部隊の25%を殺害したと発表しましたが、増援は到着しませんでした。

ウクライナ軍の包囲

ロシア軍の本格的な介入:
8月24-26日、イロヴァイスクに残っていたウクライナ軍部隊は、ドネツク人民共和国軍とロシア軍の増援部隊によって完全に包囲されました。
8月24日、ウクライナ軍はロシア軍の正規部隊を観測し、その規模は日増しに拡大しました。
8月25日、ウクライナ国防省はロシア軍の侵攻を公式に認めました。
8月26日、ウクライナ軍部隊は、ロシア軍の戦車を鹵獲しましたが、包囲網は狭まる一方でした。

包囲下の状況:
イロヴァイスク市内に多数のウクライナ軍兵士と準軍事組織部隊が閉じ込められ、反政府軍の砲撃により甚大な被害を受けました。
ウクライナ政府は包囲された部隊の救出を試みましたが、失敗しました。

ウクライナ軍の撤退と虐殺

撤退合意:
8月29日、ウクライナ軍の指揮官は、包囲された状況下で反政府軍と撤退交渉を試み、ロシアのプーチン大統領の同意のもと、人道回廊の設置で合意しました。
しかし、この合意は守られず、ウクライナ軍は撤退中に攻撃を受け、多数の死傷者が出ました。

撤退の悲劇:
8月29日、ウクライナ軍は2つの縦隊に分かれて撤退を開始しましたが、ロシア軍と反政府軍の攻撃を受けました。
北部の縦隊は、クラスナヤ・ポリヤナ渓谷で分断され、大損害を受けました。
南部の縦隊は、チェルヴォノシルケ村に到達しましたが、激しい戦闘に巻き込まれました。
8月30日、ウクライナ軍は武器を引き渡し、負傷者の後送でロシア軍と合意しました。
9月1日、内務大臣によれば、97名のウクライナ軍兵士がイロヴァイスクから脱出しました。

死傷者と余波

死傷者:
ウクライナ軍は、この戦闘を「虐殺」と表現しました。
反政府軍指揮官は、173名のウクライナ軍兵士を捕虜にしたと主張しました。
ウクライナ当局は、500名以上のウクライナ軍兵士が親ロシア派軍に捕虜になったと発表しました。
捕虜となったロシア軍兵士も確認されました。
戦闘による民間人の死傷も報告されています。

余波:
9月4日、ウクライナ軍部隊に対する刑事捜査が開始されました。
臨時議会委員会が設立され、イロヴァイスクの戦いで1,000名以上の兵士が死亡したとの報告がなされました。
* 10月14日、国防大臣が辞任を余儀なくされました。

この戦闘は、ウクライナ軍の指揮の不備とロシア軍の介入が要因となり、ウクライナ軍に深刻な損害をもたらした悲劇的な事件として記憶されています。

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