イワカガミ

イワカガミ（岩鏡）

イワカガミ（学名: Schizocodon soldanelloides）は、イワウメ科イワカガミ属に分類される常緑の多年草です。高山植物として知られていますが、実際には低山帯から高山帯まで幅広い地域に分布しています。

特徴

イワカガミの茎は細く、地を這うように伸び、その先端に葉が束になって生えます。葉は厚みがあり、光沢を帯びているのが特徴です。葉身は円形で、大きさは長さも幅も3〜6cm程度です。先端は円形または広三角形で、短く尖っています。葉の縁には鋸歯があり、基部はわずかに心形になっています。葉柄は長く、葉の基部から伸びる側脈は1箇所に集まります。

花期は4月から7月にかけてで、葉の中心から高さ10〜20cmの花茎が伸び、その先端に3〜10個の淡紅色の花が総状に咲きます。花は漏斗状で、直径は1〜1.5cmほど。花冠は5つに裂けており、その裂片の縁はさらに細かく裂けています。萼片は5個で長楕円形をしています。雄蕊は5個、そして短い仮雄蕊が5個あります。雌蕊は1個です。果実は直径3〜4mmの球形の蒴果となります。

分布と生育環境

イワカガミは、北海道、本州、四国、九州の高山帯から山地にかけて分布しており、草地や岩場で見られます。

名前の由来

和名の「イワカガミ」は、岩場に生えることと、葉に光沢がある様子を鏡に見立てたことに由来します。

種小名のsoldanelloidesは、「サクラソウ科のSoldanella属に似た」という意味です。Soldanellaは、イタリア語のsoldo（小さなコイン）に葉が似ていることにちなんでいます。ヨーロッパ原産のサクラソウ科のSoldanella alpina L.は、栽培種として日本でも流通しており、「イワカガミダマシ」という和名が付けられています。

下位分類

イワカガミは、生育環境によって植物体の大きさに変異が見られ、コイワカガミ、イワカガミ、オオイワカガミなどの名で区別されることもあります。しかし、これらの間には中間型が存在し、変異も連続的であるため、明確な区別は難しいという見解もあります。DNAの分析結果では、これらの間に違いは認められないとされています。

以下に、主な下位分類を示します（YListで「標準」とされているもの）。

シロバナイワカガミ (Schizocodon soldanelloides f. leucanthus): 基本種の白花品種です。
コイワカガミ (Schizocodon soldanelloides f. alpinus): 高山に生息し、全体的に小型で、葉の鋸歯があまり尖らないのが特徴です。
オオイワカガミ (Schizocodon soldanelloides var. magnus): 葉が大きく、円形で、長さも幅も8〜12cmに達します。縁には多くの尖った鋸歯があります。北海道南部から本州の東北地方、中部地方の日本海側にかけて分布し、多雪地帯のブナ林の林床に群生します。
シロバナオオイワカガミ (Schizocodon soldanelloides var. magnus f. niveus): オオイワカガミの白花品種とされていますが、タイプ標本の採集地が日本海側ではない山梨県の青木ヶ原であるため、ヤマイワカガミ系ではないかという指摘もあります。
ナガバイワカガミ (Schizocodon soldanelloides var. longifolius)
シロバナナガバイワカガミ (Schizocodon soldanelloides var. longifolius f. albiflorus)
ヒメコイワカガミ (Schizocodon soldanelloides var. minimus): 屋久島の上部に生息し、葉が非常に小さく、縁の鋸歯も少ないのが特徴です。以前はイワカガミやヒメイワカガミの変種とされていましたが、現在ではDNA解析によりイワカガミの変種とされています。

ギャラリー

[イワカガミの画像へのリンクなど]

脚注

[脚注へのリンクなど]

参考文献

清水建美、木原浩『山溪ハンディ図鑑8 高山に咲く花』、2002年、山と溪谷社
牧野富太郎原著、大橋広好・邑田仁・岩槻邦男編『新牧野日本植物圖鑑』、2008年、北隆館
門田裕一監修、永田芳男写真、畔上能力編『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花（増補改訂新版）』、2013年、山と溪谷社
大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 4』、2017年、平凡社
米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」（YList）
『植物研究雑誌』The Journal of Japanese Botany

外部リンク

ウィキメディア・コモンズには、イワカガミに関するカテゴリがあります。
* ウィキスピーシーズには、イワカガミに関する情報があります。

もう一度検索