サクラソウ科

サクラソウ科（Primulaceae）について

サクラソウ科は、北半球の温帯から寒帯にかけて広く分布する被子植物の科です。従来の分類体系では、サクラソウ科（狭義）の他に、ヤブコウジ科、テオフラスタ科、イズセンリョウ科などが独立していましたが、現在では広義のサクラソウ科としてまとめられています。この広義のサクラソウ科には、世界で60～80属、2300～2600種が含まれており、日本には8～10属、50種以上が分布しています。

分類・形態・分布

サクラソウ科の植物は、ほとんどが一年草または多年草で、まれに茎の基部が木質化して小低木状になるものもあります。多くの種は、葉のない直立した茎の先端に美しい花をつけます。地下には根茎や塊根を持つことが多く、葉は単葉で、対生または輪生します。葉には、多細胞の関節毛や粉状の物質が見られることがあります。

花は合弁花で、多くは放射相称、5数性です。5本のおしべは花弁と対生し、通常は花筒に付着します。子房は1室で、上位または中位です。中央には直立した胎座（中軸胎座）があり、多数の胚珠が並んでいます。果実は蒴果で、種子には胚乳があります。

かつては、特殊な胎座の形態からナデシコ目との類縁関係が考えられていましたが、現在ではヤブコウジ科に近縁であるとされています。APG植物分類体系では、第2版までシクラメンなどがヤブコウジ科に、ハイハマボッス属がテオフラスタ科に分類されていましたが、第3版以降ではこれら全てがサクラソウ科にまとめられました。なお、APG体系にはサクラソウ目は存在せず、サクラソウ科はツツジ目に含まれています。

主な属

サクラソウ科には、以下のような属が含まれています。

トチナイソウ属 (Androsace): リュウキュウコザクラなど
サクラソウモドキ属 (Cortusa)
サクラソウ属 (Primula): サクラソウ、プリムラなど
イワカガミダマシ属 (Soldanella)
ホザキザクラ属 (Stimpsonia)


また、かつてヤブコウジ科に分類されていた以下の属もサクラソウ科に含まれます。

ルリハコベ属 (Anagallis): ルリハコベなど
ヤブコウジ属 (Ardisia): ヤブコウジ、ツルコウジ、カラタチバナ、マンリョウなど
カガリビバナ属 (Cyclamen): シクラメンなど
ウミミドリ属 (Glaux)
オカトラノオ属 (Lysimachia): オカトラノオ、コナスビなど
ツルマンリョウ属 (Myrsine): ミルシネ・アフリカナ、タイミンタチバナ、ツルマンリョウなど
ツマトリソウ属 (Trientalis): ツマトリソウ

さらに、テオフラスタ科に分類されていた以下の属も含まれます。

ハイハマボッス属 (Samolus): ハイハマボッス

利用

サクラソウ科の植物は、観賞用として人気のあるものが多くあります。特に、サクラソウ属のサクラソウは、日本の野草として古くから栽培され、多くの品種が知られています。また、ヨーロッパで園芸化されたプリムラも、花形や花色が多彩で、約300もの品種が存在します。これらの植物は、公園や庭園でよく見られます。

その他、クリンソウなどの栽培種も多く、野生のものは採取圧によって減少している傾向があります。シクラメンは、晩秋から早春にかけて花を咲かせ、そのユニークな形から、室内で観賞用として栽培されています。

参考文献

Kallersjo, M., G. Bergqvist & A. A. Anderberg (2000). “Generic realignment in primuloid families of the Ericales s. l.: a phylogenetic analysis based on DNA sequences from three chloroplast genes and morphology”. Amer. J. Bot. 87: 1325-1341.
大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 4』、2017年、平凡社

外部リンク

サクラソウ科（画像）：フラボン
Primulaceae in Stevens, P. F. (2001 onwards). Angiosperm Phylogeny Website Version 7, May 2006 [and more or less continuously updated since].
Primulaceae in Watson, L., and Dallwitz, M.J. 1992 onwards. The families of flowering plants: descriptions, illustrations, identification, and information retrieval. Version: 29th July 2006

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