イワタカンアオイ

イワタカンアオイ（磐田寒葵）

概要

イワタカンアオイ（学名: Asarum kurosawae）は、ウマノスズクサ科に属する常緑の多年草であり、日本固有の植物です。その名は、発見者の黒沢美房に由来し、主に本州の東海地方に生息しています。特に静岡県の磐田市周辺と、その近郊の低地から低山地に見られる広葉樹林の湿った林床を好みます。

特徴

葉

イワタカンアオイの葉は、長い葉柄をもち、暗紫色をしています。葉身は円形または卵型で、長さ5〜7cm、幅も同様のサイズで、先端は尖っているか、あるいは丸みを帯びています。また、基部は深く心形を呈しています。葉の表面は暗緑色で光沢は無く、散発的に生える短毛が見られ、時折、白い雲紋状の斑点が入ることがあります。ヒメカンアオイと外見が似ていますが、花が咲く時期が異なります。

花

花は主に10月から11月に咲き始め、その後翌年の3月から5月まで観察することができます。花の色は緑紫色が多く、花弁が無い代わりに萼裂片が花弁のように見えます。萼筒は丸みを帯びた鐘形または円筒形で、サイズは長さ12〜14mm、直径も同様です。入口は背景が弱く広がり、内部の壁は微細な網状の隆起があり、その上には細かい毛が密生しています。萼裂片は卵形の三角形で、長さは10〜12mmで萼筒よりも短く、外部に開いています。雄蕊は12本あり、花柱も6本存在し、これらは全て萼筒の入口まで達します。

生育環境

イワタカンアオイは日本の特有種であり、静岡県磐田市および静岡県と愛知県の県境に位置する地域で特に多く見られます。主に湿った広葉樹林の林床に自生しており、適した生育環境が必要とされます。これらの場所では、他の植物と共存しながら、独自の生態系を形成しています。

保全状況

イワタカンアオイは環境省のレッドリストで絶滅危惧II類（VU）に分類されており、2000年までの評価では絶滅危惧IB類（EN）に指定されていました。これにより、この植物の保全は非常に重要であり、繊細な生態系の一部として保護が求められています。

研究の歴史

本種の発見は1965年、静岡県の森林地帯で行われました。高校教師であり植物研究者の黒沢美房がカンアオイに似た植物を採集し、研究仲間の杉本順一に生苗株が提供されました。杉本氏はこの植物を詳細に観察し、1968年には新種として発表しました。この研究は『北陸の植物』に掲載されています。

参考文献

イワタカンアオイに関する詳細な情報は複数の著作に記載されています。その中には杉本順一の『日本植物雑記』、加藤雅啓・海老原淳編著の『日本の固有植物』、さらには近年の絶滅危惧植物図鑑も含まれています。

まとめ

イワタカンアオイは、その特異な美しさと希少性から、日本の自然界において特別な地位を持つ植物です。今後もその保全が求められるため、観察や研究が一層重要となるでしょう。

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