イワツクバネウツギ

イワツクバネウツギとは

イワツクバネウツギ（岩衝羽根空木、学名: Zabelia integrifolia）は、スイカズラ科に属する落葉性の低木です。この植物は日本特有の種であり、主に本州の関東地方以西、四国、九州の山地、特に石灰岩の多い岩場に生育しています。通常は300〜1500メートルの標高に見られます。

特徴

イワツクバネウツギは、主に分枝しながら高さ約2メートルに成長します。成熟した幹は直径約4センチメートルになり、灰褐色の樹皮には特徴的な6本の縦溝があります。また、この木材は非常に硬く白色をしており、髄部分は細くて白い特徴があります。若い枝は緑色で、時には無毛または逆向きの粗い毛が見られますが、成長するにつれて赤褐色に変わります。

葉は対生しており、葉柄の基部が球状に合着している独特の形状をしています。葉の長さは2.5〜7センチメートル、幅は1〜3.2センチメートルで、形状は倒卵形や卵形、披針状長楕円形です。先端は鋭く、基部はくさび形に細くなり、通常全縁で、時に粗い鋸歯状の縁が存在します。葉の表面には細かい毛が生え、裏面には上向きの粗い毛が目立ちます。

イワツクバネウツギの花期は5月から6月で、新枝の先端に通常2つずつ花がつきます。花の長さは3〜6ミリメートルの花柄に支えられ、目立たない苞葉が基部に存在します。4つの萼片から成る花は、長さ8〜18ミリメートルで、先端は円い形をしています。花冠は細長い漏斗状で、白色に淡い紅色を帯びています。花冠の管は8〜15ミリメートルの長さで、裂片の形は平開し、半円形をしています。花の内外には毛が生え、雄蕊と雌蕊は内部に配置されています。

果実は長さ8〜13ミリメートルの細筒形の痩果で、5つの縦稜があります。果実には4つの宿存萼片がつき、9〜10月に熟しますが、裂開しない特性を持っています。種子は細長い円柱形で、両端に短い尾状の翼があります。

生育環境

この植物は、主に石灰岩地帯で見つかる種ですが、まれに蛇紋岩地でも成長します。気候や土壌の条件に適応しており、特に標高が高い山地に生息しています。

名前の由来

和名のイワツクバネウツギは、著名な植物学者牧野富太郎による命名で、「岩衝羽根空木」を意味します。その背景には、この植物が特定の環境に特有であることがあります。種小名である「integrifolia」は、「全縁葉の」という意味を持ち、葉の形状に由来しています。

種の保全状況

イワツクバネウツギは、環境省のレッドリストで絶滅危惧II類（VU）に分類されています。また、各都道府県においても絶滅危惧の状況が異なり、一部の県では情報が不足している場合もあります。これらの情報は、地域による環境の変化や保護活動に影響されることが多いです。

参考文献

• - 北村四郎・村田源著『原色日本植物図鑑 木本編I（改訂版）』、1984年、保育社
• - 茂木透写真、高橋秀男・勝山輝男監修『山溪ハンディ図鑑5 樹に咲く花 合弁花・単子葉・裸子植物』、2008年、山と溪谷社

イワツクバネウツギは、その独自の生態と美しい花で、多くの人々の目を引く植物です。分類上の興味があるだけでなく、その保護が求められる存在でもあります。

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