インガルス造船所

インガルス造船所は、アメリカ合衆国ミシシッピ州のパスカグーラに拠点を置く、歴史ある造船所です。1938年にその歴史をスタートさせ、現在はハンティントン・インガルス・インダストリーズの重要な部門として運営されています。特にアメリカ海軍艦艇の建造においては、業界をリードする存在であり、1万人を超える従業員を抱え、ミシシッピ州において最大の民間雇用主の一つとしても知られています。

造船所はパスカグーラ川がメキシコ湾へと注ぐ河口付近に位置しており、その立地は船舶建造において非常に有利です。創業当初は商用船の建造を手掛けていましたが、1950年代に入るとアメリカ海軍からの受注が増加し、1957年には原子力潜水艦12隻という大型契約を締結しました。その後、1961年にはリットン・インダストリーズ社（後にノースロップ・グラマンに買収）が経営権を取得、1968年にはドックを川の対岸に増設し、その規模を拡大しました。

インガルス造船所は、海軍艦艇だけでなく、沖合掘削船やモーターボートの製造も行っており、過去にはエジプト、イスラエル、ベネズエラといった海外の国々の艦艇を受注した実績もあります。この実績が示すように、インガルス造船所の技術力は国際的にも評価されています。

2005年8月29日には、ハリケーン・カトリーナによって設備の一部に甚大な被害を受けましたが、その後、迅速な復旧工事が行われ、事業を再開しています。この災害からの復興は、造船所の回復力と、地域社会における重要性を示しています。

鉄道車両製造事業

インガルス造船所は、造船業以外にも、第二次世界大戦後の1950年代には鉄道車両製造事業にも参入しました。ディーゼル機関車の製造に乗り出し、5種類のラインナップを展開しましたが、実際に製造されたのは旅客用の4-S形(1,500馬力)のみで、ガルフ・モバイル・アンド・オハイオ鉄道に納入されました。さらに、1980年代には4,000両以上の有蓋ホッパ車の製造も手掛け、鉄道車両分野においても一定の貢献をしています。

このように、インガルス造船所は、造船業を基盤としながらも、多角的な事業展開を行い、アメリカの産業界に貢献してきました。その歴史は、技術革新と困難を乗り越える強さ、そして地域社会への貢献の物語と言えるでしょう。

外部リンク

* Huntington Ingalls Industries （英語）

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