イングランドのカウンティ

イングランドのカウンティ：歴史と複雑な分類体系

イングランドのカウンティは、単なる地理的区分というだけでなく、地方行政や政治的境界としての役割も担ってきた歴史的地域区分です。その歴史は古く、アングロサクソン時代まで遡り、ウェセックス王国で7世紀ごろに起源を持つとされています。当初は「シャイア」と呼ばれ、その後イングランド全土に広がり、人口調査の単位としても用いられていました。

しかし、近代に至るまで、イングランドのカウンティの定義は常に変化を続けてきました。19世紀以降の一連の地方制度改革により、カウンティの境界や機能は幾度となく再編され、現在ではその定義は曖昧な部分も残されています。そのため、単に「イングランドのカウンティ」と言っても、それが何を指すのかは文脈によって異なってきます。

カウンティの種類

イングランドのカウンティには、いくつかの種類が存在します。それぞれが異なる機能や歴史的背景を持ち、明確に区別される必要があります。主な種類は以下の通りです。

歴史的カウンティ (Historic County): 古代から伝わる伝統的な39のカウンティです。その境界は時代とともに変化してきましたが、現在でも地方行政の一部として機能しているものも多くあります。
住民登録カウンティ (Registration County): 1851年から1930年まで存在したカウンティです。1851年から1911年までの国勢調査で使用され、より小さな住民登録地区から構成されていました。歴史的カウンティの境界と必ずしも一致していませんでした。
行政カウンティ (Administrative County): 1889年の地方自治法により設置されたカウンティです。カウンティ評議会によって管理され、地方行政の中核を担っていました。
典礼カウンティ (Ceremonial County): 地方長官任命などの儀式的な目的や、司法上の目的で使用されるカウンティです。現在も広く使用されているカウンティ区分です。
* 郵便カウンティ (Former Postal County): 以前は郵便制度で使用されていたカウンティです。現在では住所に必須ではありませんが、特にグレーター・ロンドンなどでは、行政カウンティとの境界が異なるため、混乱を招く場合があります。

1889年から1974年までの変遷

1889年の地方自治法により、選挙によって選出されるカウンティ評議会が設置され、地方行政の権限が移譲されました。ロンドン・カウンティもこの際に設置されました。この時代には、行政カウンティと独立したカウンティ・バラの2種類が存在していました。さらに、地方自治法による地方長官任命などの目的で用いられた区割りの変更なども行われました。1931年には、グロスターシャー、ウォリックシャー、ウスターシャー間の境界変更が行われ、飛び地の解消などが図られました。1965年には、ミドルセックスの廃止に伴う変更や、ハンティンドンシャーとピーターバラの合併などが行われました。

1974年の地方行政改革

1974年の地方行政法により、既存の地方行政機構は廃止され、新たな二層制が導入されました。46の「カウンティ」が設置され、その中には都市カウンティと非都市カウンティが含まれていました。この改革により、いくつかのカウンティは廃止され、新たなカウンティが誕生しました。

単一自治体の創設と1990年代の改革

1990年代の地方行政改革では、カウンティはさらに「リージョン」にまとめられ、多数の単一自治体が創設されました。これにより、カウンティレベルの権能を持つ単一自治体が生まれ、事実上、カウンティ・バラが復活したような形となりました。現在では、グレーター・ロンドンの外に81のカウンティレベルの地方行政体があります。

1996年以降の典礼カウンティ

1990年代の改革により、地方行政と地方長官任命の目的で用いられるカウンティの区別が復活し、「典礼カウンティ」という名称が用いられるようになりました。多くの単一自治体が典礼カウンティとなりましたが、ブリストル、イースト・ライディング・オブ・ヨークシャー、ヘレフォードシャー、ラトランド、ウスターシャーなどでは、以前の典礼カウンティが復活しています。典礼カウンティは、場所の指定や有権者登録の境界としても使用されています。

郵便カウンティ

かつて郵便制度で使用されていた郵便カウンティは、現在では住所に必須ではありません。しかし、特にグレーター・ロンドンなどでは、行政カウンティとの境界が異なるため、混乱を招くことがあります。

このように、イングランドのカウンティは、その歴史的経緯と制度改革によって複雑な分類体系を持つ地方区分です。それぞれのカウンティの定義や機能を理解するためには、その歴史的背景を踏まえることが重要です。

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