イングランド王立外科医師会

イングランド王立外科医師会：外科医療の伝統と未来

イングランド王立外科医師会（Royal College of Surgeons of England、略称RCS）は、イングランドとウェールズにおける外科医療の統制と向上を目的とした独立団体です。歯科を含む幅広い外科領域を網羅し、患者の治療と外科技術の進歩に貢献しています。

歴史：床屋ギルドから王立外科医師会へ

RCSの歴史は、1308年創設のロンドン市内の床屋ギルドにまで遡ります。当時、外科手術は主に修道僧が行っていましたが、流血を伴う行為を忌避したため、床屋が補助的な役割を担っていました。1462年、外科手術が床屋ギルドの正式業務となり、専業外科医との間で論争が勃発。1493年の協定を経て、外科医のギルドへの加入が認められました。1540年には「床屋外科医組合」として正式に設立され、1745年に外科手術を専門とする独立団体へと発展しました。1800年に勅許を得て「ロンドン王立外科医師会」となり、1843年に現在の名称となりました。

会員：FRCSと歴史的貢献

RCS会員（FRCS、Fellowship of the Royal College of Surgeons）は、英国および英連邦諸国で高いステータスを持つ称号です。敬称はMr.を用います。初期の会員には、ジョン・アバネシー、ジョン・バドリー、リチャード・パートリッジなど著名な外科医が名を連ねています。RCS司書ビクター・プラールによって開始された会員の伝記編纂事業は現在も継続されており、5000名以上の伝記がオンラインで公開されています。

本部：歴史的建造物と現代施設

RCS本部は、1797年にオールド・ベイリーからリンカーンズ・イン・フィールズに移転しました。初期の本部はジョージ・ダンス・ザ・ヤンガーとジェームス・ルイスの設計によるものでしたが、構造上の欠陥により、1833年にチャールズ・バリーの設計による建物に建て替えられました。1941年の爆撃で被害を受けましたが、図書館と玄関部分は辛うじて残存しています。

ハンテリアン博物館：貴重なコレクション

RCSには、1799年に政府から寄贈されたジョン・ハンターのコレクションを基にしたハンテリアン博物館があります。解剖学標本、外科器具、そして「アイルランドの巨人」チャールズ・バーンの骨格標本など、数多くの貴重な資料が展示されています。歯科学や博物学のコレクションも加わり、現在も重要な医学史資料として活用されています。

結び：外科医療の未来へ向けて

イングランド王立外科医師会は、700年以上の歴史を持つ由緒ある団体でありながら、常に外科医療の進歩に貢献し続けています。歴史的遺産と現代医療技術を融合させ、未来の外科医療を担う人材育成にも力を注いでいます。会員の功績、そしてハンテリアン博物館のコレクションは、その歴史と未来への取り組みを象徴する存在です。

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