リンカーンズ・イン・フィールズ

リンカンズ・イン・フィールズ：歴史と文化が織りなすロンドン中心部のオアシス

ロンドン中心部、カムデン区ホルボーンに位置するリンカンズ・イン・フィールズは、ロンドン最大級の広さを誇る広場、そしてその周辺地域を指す名称です。少なくとも12世紀から続く歴史を持ち、カムデン区最古の公園として、古くから人々の生活に寄り添ってきました。

歴史の層：古代から現代まで

リンカンズ・イン・フィールズの歴史は驚くほど深く、旧石器時代の手斧の出土からも、古くから人が居住していた痕跡がうかがえます。ローマ時代には、ロンドンの外郭にあたるこの地域は、砂利採取場や共同墓地として利用され、様々な遺物が発見されています。サクソン時代には、ロンディニウム（古代ローマ時代のロンドン）の城壁外に大規模な交易都市Lundenwicが形成され、ヴァイキングの襲来まで繁栄を謳歌しました。中世には郊外へと戻り、なめし皮や羊皮紙製造などの工場が点在する土地でしたが、リンカンズ・イン・フィールズの歴史を語る上で欠かせないリンカーン法曹院が15世紀初頭、この地に設立されたことが大きな転換点となりました。

広場の誕生と変遷：イニゴ・ジョーンズの設計と社会変動

16世紀以降、修道院の解散令などによる土地所有権の変遷を経て、この地は牧草地として利用されていました。しかし、17世紀、ロンドンの都市中心部が西方へと移行するにつれ、リンカンズ・イン・フィールズの周辺でも開発計画が進められます。リンカーン法曹院は勉学への支障を訴え反対しましたが、国王チャールズ1世の治世下、開発計画が認められ、著名な建築家イニゴ・ジョーンズなども携わった大規模な建築が始まりました。リンカーン法曹院との協定により、中心部には広場が残され、現在のリンカンズ・イン・フィールズの原型が形作られました。なお、リンカンズ・イン・フィールズがギザの大ピラミッドと同じ面積であるという説は、事実と異なります。

1666年のロンドン大火では、一時的に避難場所として利用され、17～18世紀には反カトリック運動の舞台にもなりました。19世紀には、オフィスビル群に囲まれた広場は、市民の憩いの場へと変貌を遂げ、1895年に一般公開されました。第二次世界大戦中は防空壕が設置されるなど、時代とともに変化を遂げてきました。また、一時期ホームレスの人々の野宿が問題となりましたが、現在は管理体制が強化され、静けさを取り戻しています。

処刑の影：歴史の暗い側面

リンカンズ・イン・フィールズは、悲しい歴史も背負っています。スコットランド女王メアリーと共謀してエリザベス1世暗殺を企てたとされるバビントン陰謀事件に関わった13名が、この地で処刑されたほか、ライハウス陰謀事件に関係したウィリアム・ラッセルも、ここで公開処刑されました。これらの出来事は、リンカンズ・イン・フィールズの複雑な歴史の一部として、今も記憶されています。

歴史的建造物：イニゴ・ジョーンズの傑作と名家

リンカンズ・イン・フィールズ周辺には、歴史的建造物が数多く残されています。1640年建築のリンジーハウスは、イニゴ・ジョーンズ設計の周辺最古の建築物であり、現在も法廷弁護士事務所として利用されています。チャールズ・ディケンズの小説『荒涼館』のモデルになったとも言われています。また、ニューカッスルハウスは、イングランド銀行設立の趣意書に署名が行われた場所であり、後に首相トマス・ペラム＝ホールズが執務室として利用した歴史を持ちます。これらの建物は、リンカンズ・イン・フィールズの歴史と文化を伝える貴重な遺産です。

周辺環境：名門校と司法施設が織りなす知の街

リンカンズ・イン・フィールズ周辺には、リンカーン法曹院、王立裁判所、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス（LSE）といった、司法や学術の中心地としての顔も持ちます。他にも、サー・ジョン・ソーンズ美術館、英国癌研究所、イングランド王立外科医師会など、様々な施設が集積し、知的で洗練された雰囲気を醸し出しています。

現代のリンカンズ・イン・フィールズ

今日、リンカンズ・イン・フィールズは、歴史と現代が調和する静謐な空間として、多くの人々に親しまれています。緑豊かな広場は憩いの場として、周辺の建造物は歴史と文化の息吹を感じさせる場所として、訪れる人々に様々な魅力を提供し続けています。ロンドンを訪れる際には、ぜひこの歴史と文化が織りなすオアシスを訪れてみてください。

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