イングランド防衛同盟

イングランド防衛同盟（English Defence League、略称:EDL）は、2009年6月27日に英国で設立された市民活動グループです。ルートン出身のトミー・ロビンソンによって創設されました。その活動の主な対象は、イギリス国内におけるムスリム移民や、それに伴うとされる社会問題に対する懸念表明にあります。団体の規模は、推定で25,000人から35,000人のメンバーを擁しているとされています。

団体の性格と活動

EDLは、その主張や行動から、しばしば英国の極左団体からの激しい攻撃に晒されてきました。また、EDLの支持者と、ファシズムに反対する極左団体「Unite Against Fascism」（UAF）の支持者との間で、街頭などでの衝突がたびたび発生しています。

敵対する立場からは、EDLは結束主義（ファシズム）的な団体であると非難されることがあります。しかし、創設者であったトミー・ロビンソン自身は、ムスリムへの批判を展開しつつも、自らを反結束主義であると主張していました。

他の勢力との関係

EDLは、共通の反イスラーム感情を基盤として、ユダヤ教徒やシオニズムを支持する団体と積極的に連携する傾向が見られました。いくつかのシオニスト系の組織からは、財政的な支援を受けていたことも報告されています。2010年10月には、アメリカ合衆国在住のラビで、保守的な政治運動「ティーパーティー運動」の活動家でもあるナフム・シフレンが、EDLへの連帯を公式に表明しました。

また、EDLの存在や活動は、国際的な反イスラーム運動にも影響を与えました。例えば、ミャンマーにおいては、ムスリム排斥を公然と掲げる仏教系宗教団体である969運動が、仏教僧のウィラツによって組織される際に、EDLを手本にしたとされています。ノルウェー、デンマーク、ベルギーといった他のヨーロッパ諸国にも類似の組織が存在しており、これらの各国の反イスラーム勢力は、インターネットなどの媒体を通じて相互に連携を取り合っています。

創設者の離脱

団体の創設者であるトミー・ロビンソンは、結成当初から積極的にテレビなどのメディアに登場し、自らの意見を述べたり討論に参加したりすることで、EDLの知名度向上に大きく貢献しました。

しかし、彼は後に思想的な変化を経験します。イスラム原理主義の過激思想から脱却した若いムスリムたちの支援を行うQuilliam財団のメンバーや、他のムスリムの人々と個人的に接触を持つ中で、「過激派との戦い方そのものを誤っていたのではないか」と深く考えるようになったのです。さらに、自身の活動が原因で、学校に通う子供たちを迎える際に向けられる批判的な視線を目の当たりにし、「自分が当初訴えたかったこととは違う状況を生み出してしまった」と感じるに至りました。これらの理由から、彼はEDLからの脱退を表明しました。

EDLの活動や性質は、現代イギリス社会における移民問題、宗教間関係、そして極右・極左勢力の対立といった複雑な側面を反映しています。

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