イングリア

イングリアの歴史と背景

イングリア（ロシア語: Ингрия）は、ネヴァ川流域やフィンランド湾、ナルヴァ川、ペイプシ湖、ラドガ湖に囲まれた地域の歴史的な名称です。今日、イングリアという名は主にサンクトペテルブルクを中心とした地域に関連付けられています。この地域は古くから様々な民族に住まわれ、歴史において重要な位置を占めてきました。

古代の民族とロシア化の進展

イングリアは、もともとフィン・ウゴル族が居住していた場所であり、初期にはイジョラ人やヴォート人、さらにイングリア・フィン人やエストニア人がこの地域に進出しました。しかし、スラヴ人、特に東スラヴ人の進出によって、次第にこの地はロシア化が進んでいきました。また、ノヴゴロド公国に編入されて以降、イングリアは北方十字軍の際にスウェーデン人による侵攻を受けて、争奪地となってしまいました。

ノヴゴロド公国とキリスト教の対立

13世紀から14世紀にかけて、ノヴゴロド公国はイングリアにも勢力を広げ、ここは東西のキリスト教の争いの場ともなりました。1293年にスウェーデンがカレリア地峡にヴィボルグを建設し、ロシアはこれに対抗する形でコレラ（プリオジョールスク）を建設しました。1323年にはオレホフの和議により、スウェーデン、ロシア、フィンランドの国境が確立され、カレリア地方はロシアの領土となりました。その後もスウェーデンとロシアは幾度となく戦争を繰り広げました。

スウェーデン統治とイングリアの変化

1610年以降のイングリア戦争で、スウェーデンはロシア帝国に勝利し、1617年のストルボヴァの和議でロシアからカレリア地峡やラドガ湖北部を奪いました。この地域はスウェーデンによって「インゲルマンランド」と名付けられ、フィンランド人が入植しました。スウェーデン統治時代にはルター派信者が増え、17世紀には人口の大半がルター派へと変わりました。

ロシアの再進出とその影響

18世紀の大北方戦争において、ロシアはスウェーデンに決定的な勝利を収め、イングリアを再び手中に収めました。特に1702年にサンクトペテルブルクの建設が開始され、1721年のニスタット条約により、イングリアを含む地域が正式にロシア領となりました。以降、この地はロシアにとって重要な拠点となり、ピョートル大帝の時代には強制的な移住政策により地域のロシア化が進みました。

フィンランドとの関係

ロシアはフィンランドを1812年に大公国として併合しました。フィンランド大公国の設立により、イングリアはその一部となりながらも、地域の民族との関係が複雑化しました。また、ロシア革命後には白軍と赤軍の衝突があり、地域の民族的な緊張がさらに高まることとなりました。

現在のイングリア

現在、イングリアはロシア連邦のレニングラード州に位置し、少数のイゾリア人が居住しています。また、ロシアの崩壊後、多くのイングリア・フィン人がフィンランドに移住するようになりました。地域の歴史的背景を踏まえると、イングリアは国境や民族間の関係に深い影響を与えた地であり、今なおその変遷を物語る場所です。

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