イングリッド (カプコン)
イングリッドは、ゲームメーカー・カプコンが手掛ける対戦型格闘ゲームの世界に登場する、謎多き架空のキャラクターです。主に『CAPCOM FIGHTING Jam』や、携帯ゲーム機向けに発売された『ストリートファイターZERO3↑↑』といったタイトルでプレイヤーの前に姿を見せました。彼女を担当する声優は城雅子です。
イングリッドの原点は、惜しくも開発中止となった3D対戦格闘ゲーム『CAPCOM FIGHTING ALL STARS』（CFAS）のために生み出されたキャラクターに遡ります。開発発表当時、ゲーム雑誌などでその存在が紹介されていました。ゲーム本編以外での商品展開、例えばプライズゲームの景品やカプセルトイといった形でフィギュアが登場したことをきっかけに、2004年の『CAPCOM FIGHTING Jam』（CFJ）にてオリジナルキャラクターとして初めてゲームに実装されます。さらに2006年には、PSP向けソフト『ストリートファイターZERO3↑↑』（ZERO3↑↑）にも参戦を果たしました。
その後も彼女の活動範囲は広がりを見せます。2012年3月には、海外で販売された『ストリートファイター X 鉄拳』の限定版に付属するプロローグコミックに登場。2013年3月には、ブラウザゲーム『鬼武者Soul』内のイベント「カプコンヒロインズ コラボブースターパック」にて武将として登場し、イベントクエスト「絢爛カプコンヒロインズ」では物語の鍵を握るメインキャラクターとして扱われました。2014年1月からは、スマートフォンアプリ『オトレンジャー』（現在はサービス終了）にも、『CFAS』に登場予定だった男性キャラクター、D.D.とルークと共に「CODE HOLDER」名義で登場しています。そして2015年11月発売のクロスオーバー作品『PROJECT X ZONE 2:BRAVE NEW WORLD』には、『ZERO3↑↑』からの出典としてソロユニットで参戦しています。
イングリッドは、まるでドレスのような可憐な衣装を身に纏い、長く垂らした神秘的な銀髪と、印象的な赤い瞳を持つ少女として描かれています。頭部につけた、紋章が刻まれた二つの丸い髪留めが彼女のトレードマークです。しかし、その幼い外見とは裏腹に、一人称を「わし」とし、語尾に「じゃ」を付けるなど、非常に古風で年老いた人物のような言葉遣いをします。また、現代ではあまり使われないような死語を多用するなど、外見と内面には大きなギャップが見られます。こうした言動からは、彼女が若い見た目に反して、非常に長い年月を生きているのではないかという素振りがうかがえます。キャラクターの原案を手がけた北千里氏によると、デザインの際に重視されたのは「実際にかなりの年を取っている」という点で、精神的な高齢者であることから素肌の露出を極力抑え、長い年齢経過の表現として白髪が採用されました。全体の配色が寒色系であるため、目を補色である赤にすることで、より印象を強くする工夫がなされています。髪飾りは、かつてスペインの貴族女性が使用していた髪留めが参考にされています。
『CAPCOM FIGHTING ALL STARS』の構想では、イングリッドはD.D.、ルークと共に「CODE HOLDER（コードホルダー）」と呼ばれる存在の一員でした。これは「神なる力を持つ者」とされ、それぞれが特別な「能力」と「紋章」を有しているとされています。イングリッドの場合、その紋章は頭部の髪留めにあると設定されていました。コードホルダーたちは、物語の黒幕となる謎の人物デス（本名アヴェル）を追う立場にありました。『ストリートファイターV』（ストV）の公式サイト「シャドルー格闘家研究所」で後に公開された設定によると、イングリッドとアヴェルは生まれつきの「ナチュラルコードホルダー」であり、短命なアヴェルに対し、イングリッドは長命であるとされています。一方、D.D.とルークは自然発生ではなく、謎の組織によって遺伝子を覚醒させられコードホルダーとなったと説明されています。
正式な登場作品である『CFJ』と『ZERO3↑↑』では、光の力を駆使した独自の技を使用します。通常投げとしては、相手を掴んで殴りつける「ライトバニッシュ」や、スパークによるダメージを与える「サンクラック」（ボタン連打でダメージ増加）があります。『ZERO3↑↑』では空中投げも使用しました。特殊技には、中段属性のパンチ技「サンプライト」、前方への短いステップ移動「イージーステップ」、スライディングキックの「リトルラグ」があります。『ZERO3↑↑』限定の移動技として「ラブロール」も存在します。
必殺技では、光のボールを放つ飛び道具「サンシュート」（ボタンで軌道変化）、光を纏って突進しサマーソルトキックで追撃する「サンライズ」、単体のサマーソルトキック「サンアーチ」があります。「サンライズ」と「サンアーチ」はガードされたり空振りしたりした後の隙が大きいという特徴があります。空中からは回転しながら急降下する「サンダイブ」を使用します。また、相手の攻撃を受け止めて反撃する当て身投げを持ち、上段攻撃に対応する「サンアッパー」と下段攻撃に対応する「サンローワー」を使い分けます。
強力なスーパーアーツやスーパーコンボとしては、爆発する光球を放つ飛び道具「サンバースト」、『サンライズ』の強化版のような突進技「サンシャイン」、そして指先に光を集めて発生させた光球で相手を捕らえ、上空に打ち上げてから叩き落とすガード不能技「サンデルタ」があります。「サンデルタ」は発動時のボタンによって光球の出現位置が変化し、外した時の隙が大きいですが、KO時には特別な演出が発生します。『ZERO3↑↑』では「サンデルタ」で相手にとどめを刺すと、勝利ポーズが変化するというユニークな演出もありました。
イングリッドは『CFJ』のCPU戦において、特定の条件を満たすことで乱入キャラクターとして登場し、その際には久保麻衣子が歌う「陽炎」が彼女専用のBGMとして流れます。この楽曲はサウンドトラックのボーナストラックとしても収録されました。『ZERO3↑↑』では、他の多くのキャラクターと異なり、固有のステージを持たず、様々なキャラクターのステージに登場するという形式でした。その他の作品では、『SNK VS. CAPCOM カードファイターズDS』にプレイヤーカードとして登場しています。
彼女の人間関係についても触れられています。勝利メッセージから、『CFJ』ではレオに、『ZERO3↑↑』ではブランカに好意を抱いていることが明らかになっており、特にブランカとの対戦前には4パターンもの専用掛け合いが用意されていました。『タツノコ VS. CAPCOM』には未登場ですが、開発テスト段階でポリゴンモデルが存在しており、プレイヤーからの参戦希望が多かったキャラクターの一人として名前が挙げられています。
また、『ストリートファイターV』公式サイトの「キャラ図鑑」では、彼女の好きな物と嫌いな物が公開されたほか、2Pカラーとして想定されていた「暗黒イングリッド」のデザインと設定も披露されています。この設定では、通常のイングリッドをあらゆる面で上回る性能を持つものの、胸のサイズだけが劣っており、それをコンプレックスにしているというユニークな側面が付け加えられています。『ストV』本編では、かりんのアレンジコスチュームとしてイングリッドを再現した衣装が配信されているほか、追加ステージである「Ring of Arcade」の背景に彼女本人が描かれています。
このように、イングリッドは一度は未発売となった企画から生まれながらも、その独特なキャラクター設定と複数の作品への登場を通じて、カプコンの格闘ゲーム世界において確固たる存在感を放ち続けています。
誕生の経緯と広がり
イングリッドの原点は、惜しくも開発中止となった3D対戦格闘ゲーム『CAPCOM FIGHTING ALL STARS』（CFAS）のために生み出されたキャラクターに遡ります。開発発表当時、ゲーム雑誌などでその存在が紹介されていました。ゲーム本編以外での商品展開、例えばプライズゲームの景品やカプセルトイといった形でフィギュアが登場したことをきっかけに、2004年の『CAPCOM FIGHTING Jam』（CFJ）にてオリジナルキャラクターとして初めてゲームに実装されます。さらに2006年には、PSP向けソフト『ストリートファイターZERO3↑↑』（ZERO3↑↑）にも参戦を果たしました。
その後も彼女の活動範囲は広がりを見せます。2012年3月には、海外で販売された『ストリートファイター X 鉄拳』の限定版に付属するプロローグコミックに登場。2013年3月には、ブラウザゲーム『鬼武者Soul』内のイベント「カプコンヒロインズ コラボブースターパック」にて武将として登場し、イベントクエスト「絢爛カプコンヒロインズ」では物語の鍵を握るメインキャラクターとして扱われました。2014年1月からは、スマートフォンアプリ『オトレンジャー』（現在はサービス終了）にも、『CFAS』に登場予定だった男性キャラクター、D.D.とルークと共に「CODE HOLDER」名義で登場しています。そして2015年11月発売のクロスオーバー作品『PROJECT X ZONE 2:BRAVE NEW WORLD』には、『ZERO3↑↑』からの出典としてソロユニットで参戦しています。
外見と内面のギャップ
イングリッドは、まるでドレスのような可憐な衣装を身に纏い、長く垂らした神秘的な銀髪と、印象的な赤い瞳を持つ少女として描かれています。頭部につけた、紋章が刻まれた二つの丸い髪留めが彼女のトレードマークです。しかし、その幼い外見とは裏腹に、一人称を「わし」とし、語尾に「じゃ」を付けるなど、非常に古風で年老いた人物のような言葉遣いをします。また、現代ではあまり使われないような死語を多用するなど、外見と内面には大きなギャップが見られます。こうした言動からは、彼女が若い見た目に反して、非常に長い年月を生きているのではないかという素振りがうかがえます。キャラクターの原案を手がけた北千里氏によると、デザインの際に重視されたのは「実際にかなりの年を取っている」という点で、精神的な高齢者であることから素肌の露出を極力抑え、長い年齢経過の表現として白髪が採用されました。全体の配色が寒色系であるため、目を補色である赤にすることで、より印象を強くする工夫がなされています。髪飾りは、かつてスペインの貴族女性が使用していた髪留めが参考にされています。
「CODE HOLDER」としての設定
『CAPCOM FIGHTING ALL STARS』の構想では、イングリッドはD.D.、ルークと共に「CODE HOLDER（コードホルダー）」と呼ばれる存在の一員でした。これは「神なる力を持つ者」とされ、それぞれが特別な「能力」と「紋章」を有しているとされています。イングリッドの場合、その紋章は頭部の髪留めにあると設定されていました。コードホルダーたちは、物語の黒幕となる謎の人物デス（本名アヴェル）を追う立場にありました。『ストリートファイターV』（ストV）の公式サイト「シャドルー格闘家研究所」で後に公開された設定によると、イングリッドとアヴェルは生まれつきの「ナチュラルコードホルダー」であり、短命なアヴェルに対し、イングリッドは長命であるとされています。一方、D.D.とルークは自然発生ではなく、謎の組織によって遺伝子を覚醒させられコードホルダーとなったと説明されています。
格闘ゲームでの技
正式な登場作品である『CFJ』と『ZERO3↑↑』では、光の力を駆使した独自の技を使用します。通常投げとしては、相手を掴んで殴りつける「ライトバニッシュ」や、スパークによるダメージを与える「サンクラック」（ボタン連打でダメージ増加）があります。『ZERO3↑↑』では空中投げも使用しました。特殊技には、中段属性のパンチ技「サンプライト」、前方への短いステップ移動「イージーステップ」、スライディングキックの「リトルラグ」があります。『ZERO3↑↑』限定の移動技として「ラブロール」も存在します。
必殺技では、光のボールを放つ飛び道具「サンシュート」（ボタンで軌道変化）、光を纏って突進しサマーソルトキックで追撃する「サンライズ」、単体のサマーソルトキック「サンアーチ」があります。「サンライズ」と「サンアーチ」はガードされたり空振りしたりした後の隙が大きいという特徴があります。空中からは回転しながら急降下する「サンダイブ」を使用します。また、相手の攻撃を受け止めて反撃する当て身投げを持ち、上段攻撃に対応する「サンアッパー」と下段攻撃に対応する「サンローワー」を使い分けます。
強力なスーパーアーツやスーパーコンボとしては、爆発する光球を放つ飛び道具「サンバースト」、『サンライズ』の強化版のような突進技「サンシャイン」、そして指先に光を集めて発生させた光球で相手を捕らえ、上空に打ち上げてから叩き落とすガード不能技「サンデルタ」があります。「サンデルタ」は発動時のボタンによって光球の出現位置が変化し、外した時の隙が大きいですが、KO時には特別な演出が発生します。『ZERO3↑↑』では「サンデルタ」で相手にとどめを刺すと、勝利ポーズが変化するというユニークな演出もありました。
その他のエピソードと関連情報
イングリッドは『CFJ』のCPU戦において、特定の条件を満たすことで乱入キャラクターとして登場し、その際には久保麻衣子が歌う「陽炎」が彼女専用のBGMとして流れます。この楽曲はサウンドトラックのボーナストラックとしても収録されました。『ZERO3↑↑』では、他の多くのキャラクターと異なり、固有のステージを持たず、様々なキャラクターのステージに登場するという形式でした。その他の作品では、『SNK VS. CAPCOM カードファイターズDS』にプレイヤーカードとして登場しています。
彼女の人間関係についても触れられています。勝利メッセージから、『CFJ』ではレオに、『ZERO3↑↑』ではブランカに好意を抱いていることが明らかになっており、特にブランカとの対戦前には4パターンもの専用掛け合いが用意されていました。『タツノコ VS. CAPCOM』には未登場ですが、開発テスト段階でポリゴンモデルが存在しており、プレイヤーからの参戦希望が多かったキャラクターの一人として名前が挙げられています。
また、『ストリートファイターV』公式サイトの「キャラ図鑑」では、彼女の好きな物と嫌いな物が公開されたほか、2Pカラーとして想定されていた「暗黒イングリッド」のデザインと設定も披露されています。この設定では、通常のイングリッドをあらゆる面で上回る性能を持つものの、胸のサイズだけが劣っており、それをコンプレックスにしているというユニークな側面が付け加えられています。『ストV』本編では、かりんのアレンジコスチュームとしてイングリッドを再現した衣装が配信されているほか、追加ステージである「Ring of Arcade」の背景に彼女本人が描かれています。
このように、イングリッドは一度は未発売となった企画から生まれながらも、その独特なキャラクター設定と複数の作品への登場を通じて、カプコンの格闘ゲーム世界において確固たる存在感を放ち続けています。
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