インストール (小説)

インストール

『インストール』は、綿矢りさによる中編小説で、作者が17歳だった2001年に第38回文藝賞を受賞したデビュー作です。同年11月に河出書房新社から単行本が刊行され、50万部を売り上げるベストセラーとなりました。2003年にはみづき水脈によってコミック化、2004年には片岡K監督、上戸彩主演で映画化もされています。

あらすじ

物語の主人公は、受験戦争から脱落し、登校拒否となった女子高生の野田朝子。ある日、部屋の大掃除を始めた彼女は、部屋の物を全てゴミ捨て場に運び出します。しかし、亡くなった祖父の形見であるコンピューターだけは捨てられずにいました。意を決してコンピューターをゴミ捨て場に運んだ朝子は、そこで偶然出会った小学生の少年・青木かずよしに、そのコンピューターを譲ります。

数日後、朝子は同じマンションに住む女性から下着を貰ったお礼として、図書カードを渡すために青木家を訪れます。そこで出会ったのは、ゴミ捨て場で会ったかずよしでした。かずよしは朝子に、コンピューターを修理したことを告げ、風俗チャットのアルバイトを持ちかけます。それは、かずよしのメル友である風俗嬢・雅の代わりにチャットをするというものでした。朝子は戸惑いながらもそのバイトを始め、様々な人とのチャットを通じて、彼女の心境は徐々に変化していきます。

登場人物

野田朝子
17歳。英文科に通う高校3年生で、本作の主人公。受験戦争から脱落し、登校拒否児となるが、有名になりたいという願望を抱えている。かずよしとの出会いをきっかけに、風俗チャットのアルバイトを始める。
青木かずよし
12歳。朝子と同じマンションに住む小学生。コンピューターの知識が豊富で、朝子を風俗チャットのアルバイトに誘う。母親との関係に悩みを抱えている。
雅
26歳。かずよしのメル友である風俗嬢。多忙のため、昼間のチャットのアルバイトを朝子に依頼する。
光一
朝子のクラスメイト。担任のナツコ先生の恋人。予備校で疲れている朝子を心配する。
青木さより
かずよしの母親。デパートの下着売り場で働いている。少し変わったところがあり、かずよしを悩ませている。
聖璽（せいじ）
浪人生。チャットの客だったが、朝子が雅ではないことを見抜き、彼女を追い詰める。
ナツコ先生
朝子たちのクラスの担任。光一の恋人。
朝子の母
娘とのコミュニケーションを苦手としている。

評価

文藝賞の選考では、審査員から満場一致で絶賛されました。また、福田和也は三島賞の選評で、本作を同じインターネットを題材にした阿部和重の作品よりも高く評価しています。

書籍情報

単行本：『インストール』河出書房新社、2001年11月、ISBN 4309014372
文庫本：『インストール』河出書房新社、2005年10月、ISBN 4309407587（書き下ろし短編「You can keep it.」併録）

映画

映画『インストール』は、綿矢りさの同名小説を原作として、片岡Kが監督を務めました。劇場映画初監督作品であり、PG-12指定作品です。第17回東京国際映画祭コンペティション部門に出品されましたが、興行成績は振るわず、作品としての評価も高くありませんでした。

映画版の登場人物

野沢朝子（演：上戸彩）
登校拒否の女子高生。かずよしとの出会いをきっかけに、チャットの世界に足を踏み入れる。過去に恋人を亡くした経験を持つ。
青木かずよし（演：神木隆之介）
パソコンやチャットに詳しい少年。朝子をチャットの世界へ導く。
コウイチ（演：中村七之助）
朝子の想い人であったが、交通事故で亡くなってしまう。
モモコ先生（演：菊川怜）
朝子の英語教師。コウイチの恋人。
青木かより（演：小島聖）
かずよしの母。下着売り場で働いている。
野沢毬恵（演：田中好子）
朝子の母。小学校教師。
雅（演：Kaoru）
かずよしのメル友で風俗嬢。朝子にチャットのアルバイトを依頼する。

スタッフ

原作：綿矢りさ
監督：片岡K
脚本：大森美香
音楽：Rita-iota

外部リンク

映画公式サイト
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* IMDb

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