インダス河畔の戦い

インダス河畔の戦い：モンゴル帝国とホラズム帝国の激突

1221年、現在のインドとパキスタン国境地帯を流れるインダス川周辺で、歴史に名を刻む大規模な戦闘が勃発しました。それは、ホラズム帝国のスルタン、ジャラールッディーンと、東奔西走する彼を追い詰めるチンギス・カン率いるモンゴル帝国軍との間で繰り広げられた、インダス河畔の戦い（Battle of Indus）です。

この戦いの発端は、チンギス・カンによるホラズム帝国征服戦争に遡ります。モンゴル軍は、ホラズム帝国の主要都市であるブハラやサマルカンドを次々と陥落させ、ジャラールッディーンは敗走を余儀なくされました。彼は、ペルシアから逃れてきた数千人の避難民を率い、インドへと向かう途中にありました。

ガズナ近郊でモンゴル軍と交戦したバルワーンの戦いでは勝利を収めたジャラールッディーンでしたが、それは一時的なものに過ぎませんでした。インドへの脱出を図るジャラールッディーンの眼前には、インダス川が立ちはだかっていました。彼は、兵士を配置してモンゴル軍の進撃を遅らせ、避難民の安全な渡河を確保しようとしました。

しかし、チンギス・カンの戦略は巧妙でした。モンゴル軍の前衛部隊がホラズム軍と激しく交戦している間に、チンギス・カンは主力部隊を迅速に移動させ、インダス川とジャラールッディーンの軍の間に配置しました。ホラズム軍は、モンゴル軍の挟み撃ちに遭い、壊滅的な打撃を受けます。避難民たちは兵士たちから切り離され、多くが虐殺されました。

ジャラールッディーンは、絶体絶命の危機に瀕していました。彼は僅かな従者と共に、馬に乗ってインダス川を渡河を試みました。しかし、生き残って対岸にたどり着いたのはわずかな数の人々だけでした。インダス河畔の戦いは、ジャラールッディーンにとって悲惨な敗北となりました。

この敗北の後、ジャラールッディーンはインドで約3年間、放浪の生活を送りました。その後、彼はペルシアへと戻り、ホラズム帝国の復興を目指して戦いを続けました。しかし、インダス河畔の戦いは、ホラズム帝国滅亡への道を決定づける、大きな転換点となったのです。モンゴル帝国の圧倒的な軍事力と、チンギス・カンによる綿密な戦略が、この戦いの結果を決定づけたと言えるでしょう。この戦いは、モンゴル帝国の西アジア進出における重要な出来事の一つとして、歴史に刻まれています。

関連項目

ワールシュタットの戦い
チンギス・カンの西征

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