インチェントロ

インチェントロ（Incentro）

インチェントロは、1998年にドイツの鉄道車両メーカーアドトランツが発表した超低床電車のシリーズです。この車両は、様々な形態の路面電車が共通の仕様を持つことを目指して開発され、2000年にはフランス・ナントで、さらに2004年にはイギリス・ノッティンガムで導入されました。日本では、新潟トランシスがボンバルディアの協力を得て、インチェントロのデザインを採用した車両を製造しています。

アドトランツとその歴史

アドトランツは、1996年にダイムラー・ベンツ傘下のAEGの鉄道システム部門と、スイス・スウェーデンの電機メーカーアセア・ブラウン・ボベリ（ABB）の鉄道システム部門が合併して設立された企業です。1998年には新型鉄道車両7種を発表し、その中にはインチェントロも含まれています。このシリーズは、特に路面電車に焦点を当てた設計がなされ、100%低床の構造を特徴としています。

インチェントロの設計と構造

インチェントロは、台車がある車両と台車がないフローティング車体から構成されています。このデザインにより、乗降時に利用者が容易にアクセスできるようになっています。また、台車の設計には独立車輪が採用されており、車両の動力源には主電動機が台車枠に直接取り付けられています。これにより、運行に必要な特別な継手や歯車を使用せずに、スムーズかつ効率的な走行が実現されています。

導入の実績

インチェントロの初導入は2000年にフランスのナントで行われました。ナントでは、AT6/5L型として知られる5車体からなる両運転台車を運行しており、当初の受注では23編成が発注されました。これを受けて、2000年に最初の編成がナントに到着し、その後33編成が納入されています。ナントの車両は、長さ36.4メートル、幅2.4メートル、自重38.9トンという仕様を持ち、最高速度は70キロメートル毎時です。

イギリス・ノッティンガムでも、2004年に新たにノッティンガム・エクスプレス・トランジットでインチェントロが導入されました。こちらの型式名はAT6/5で、ナントと同様に5車体から構成されていますが、長さは33メートルで、最高速度は80キロメートル毎時に達します。この導入により、ノッティンガムはイギリスにおいて初めて100%超低床車両を導入した都市となりました。

日本での普及

日本においては、新潟トランシスがアドトランツとの協力のもとで超低床電車の導入を進めています。新潟鉄工所は、1997年に熊本市交通局9700形を皮切りに、続いて岡山電気軌道9200形を製造しました。9200形はインチェントロのデザインを利用し、地元の要望に応じた形で車体の外観を変更しています。ただし、足回りは従来のブレーメン形を使用し、電動機の配置にも工夫が凝らされています。このように、インチェントロの技術とデザインは日本の鉄道車両にも影響を与え続けています。

今後の展望

インチェントロは、その設計思想や技術面での革新性から、現代の公共交通機関においてますます求められる存在となっています。今後も日本国内外での導入が期待され、各地の交通インフラの発展に寄与することでしょう。

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