インドとモルディブの関係

インド・モルディブ関係

インド共和国とモルディブ共和国の関係は、インド洋における地理的な近接性を基盤として、長年にわたり友好的かつ密接に保たれています。両国は戦略、経済、軍事など多岐にわたる分野で強い結びつきを持ち、特にインドはモルディブの安全保障に重要な役割を果たしてきました。

歴史と関係の基盤

モルディブ諸島は、インド領ラクシャドウィープの南方に位置します。両国の外交関係は、モルディブがイギリスから独立した1966年に始まりました。インドは、モルディブの独立を初期に承認した国の一つであり、以来、両国は戦略的、軍事的、経済的、文化的に親密な関係を築いてきました。モルディブ側は、インドからの継続的な支援を重視するとともに、近隣国であるスリランカとの関係における均衡を保つ上でも、インドとの友好関係を重要視してきました。

二国間協力の進展

両国は1976年に海上国境を正式に確定させました。1981年には包括的な貿易協定を締結するなど、経済的な連携も進んでいます。1982年にはミニコイ島に関する一時的な領土問題が生じましたが、モルディブ政府の即時否定により解消されました。両国は南アジア地域協力連合（SAARC）や南アジア自由貿易圏（SAFTA）といった地域の枠組みの創設メンバーまたは締約国として、地域協力にも積極的に取り組んでいます。首脳レベルでの対話も継続的に行われています。

サボテン作戦：安全保障協力の象徴

1988年11月、モルディブは深刻な危機に直面しました。タミル・イーラム人民解放機構（PLOTE）の武装民兵が、国内の協力者と共に政府転覆を試みたのです。このクーデター未遂は、首都マレで発生し、政府施設などが一時占拠されましたが、マウムーン・アブドル・ガユーム大統領は脱出し、インドに軍事支援を要請しました。

当時のインド首相ラジーヴ・ガンディーは、要請からわずか数時間で約1600名のインド軍部隊を派遣する決定を下しました。この作戦は「サボテン作戦」（Operation Cactus）と名付けられ、インド軍は要請から12時間以内にモルディブに到着。その数時間後にはクーデター勢力を制圧し、モルディブ政府の統治権を回復させました。この作戦で、民兵19人が死亡、インド兵1人が負傷しました。

インドの迅速かつ断固たる行動は、アメリカ、ソ連、イギリスを含む主要国や、ネパール、バングラデシュといった近隣国から高く評価されました。特にアメリカ大統領（当時）は「地域の安定に価値ある貢献」と称賛し、イギリス首相（当時）はインドの救援活動に感謝の意を表明しました。一方で、スリランカの一部メディアからは、インドの覇権拡大への懸念を示す論調も見られました。

サボテン作戦でのインドの成功は、両国間の友好協力関係を一層強固なものとしました。この危機を通じて、モルディブは将来の安全保障にとって極めて重要であると再認識することとなりました。

広範な経済協力

サボテン作戦以降、インドとモルディブの経済関係はさらに拡大しています。インドはモルディブに対する経済援助を増やし、社会基盤整備、保健、交通、通信、人材育成など、幅広い分野で協力プロジェクトを展開しています。マレにあるインディラ・ガンディー記念病院の建設支援や、通信・航空インフラの拡充、モルディブ人学生への奨学金提供などがその例です。貿易面では、インドからの輸出がモルディブへの輸入を大きく上回る状況が続いています（2006年には輸出約38.4億ルピーに対し輸入6千万ルピー未満）。インドステイト銀行はモルディブの経済開発に5億ドル以上を投資しており、マグロ漁業や加工分野での共同事業計画も進められています。これらの経済的な結びつきは、両国関係の安定と発展に寄与しています。

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