南アジア地域協力連合

南アジア地域協力連合（SAARC）：発展途上国の協調と課題

南アジア地域協力連合（SAARC）は、南アジア諸国の経済発展、社会進歩、文化交流を促進するため、1985年に設立された地域協力組織です。バングラデシュのジアウル・ラフマン大統領による地域協力の提唱を端緒に、1981年から準備段階を経て、同年12月8日、ダッカでの首脳会議においてSAARC憲章が採択され、正式に発足しました。当初は7ヶ国でしたが、2007年にアフガニスタンが加盟し、現在8ヶ国が加盟しています。本部はネパールのカトマンズに置かれています。

SAARCの目的と原則

SAARC憲章の第一条では、南アジア諸国の国民の福祉増進と生活水準の向上、経済成長、社会進歩、文化発展の促進を目的としています。また、集団的自立の促進、相互信頼の醸成、社会・経済・文化・科学技術分野における協力と相互支援、他の開発途上国や国際機関との協力も謳われています。

第二条では、主権平等、領土保全、政治的独立、内政不干渉、互恵の原則を尊重することを原則としています。二国間・多国間協力の代替ではなく補完的な役割を担い、既存の義務に矛盾しないことを明記しています。

組織機構と活動

SAARCは、首脳会議、閣僚会議、常置委員会、専門委員会などの機関で構成されています。首脳会議は原則として年1回開催されますが、必要に応じて複数回開催されることもあります。閣僚会議は外相からなり、年2回開催されます。常置委員会は外務次官からなり、必要に応じて開催され、閣僚会議に報告を行います。専門委員会は協力分野ごとに設置され、計画の実施、調整、モニタリングを行います。

SAARCの活動は多岐に渡り、農業、保健、教育、運輸、文化など様々な分野に及びます。地域センターの設置や、専門委員会による調査研究、研修、セミナーの開催なども行われています。2006年には、南アジア自由貿易圏（SAFTA）が発足し、域内貿易の自由化が進められています。しかし、域内貿易額は地域全体の5%程度にとどまっており、潜在能力を十分に発揮できているとは言えません。

課題と今後の展望

SAARCは、設立以来、インドとパキスタンの関係悪化、内戦や政情不安など、様々な困難に直面してきました。首脳会議の延期や開催不能も度々発生し、活動の停滞を招いてきました。

SAFTAの発足は大きな成果ですが、関税の引き下げなど、貿易自由化の進展は緩慢です。インドとパキスタンをはじめ、加盟国間の政治的対立、貧富の格差、テロといった課題が、SAARCの活動を阻害する大きな要因となっています。

今後のSAARCの展望は、これらの課題への対応にかかっています。加盟国間の信頼醸成、政治的対立の解消、経済格差の是正、テロ対策などが不可欠です。また、SAFTAの更なる推進や、他の地域協力機関との連携強化も重要です。南アジア地域の平和と発展のため、SAARCの更なる活性化が期待されます。

加盟国とオブザーバー国

加盟国: インド、パキスタン、バングラデシュ、スリランカ、ネパール、ブータン、モルディブ、アフガニスタン

オブザーバー国: 中国、日本、アメリカ合衆国、欧州連合、イラン、モーリシャス、オーストラリア、ミャンマーなど

事務局と地域センター

SAARCの事務局はネパールのカトマンズに置かれています。農業情報センター（ダッカ）、結核センター（カトマンズ）、ドキュメンテーション・センター（ニューデリー）、気象調査センター（ダッカ）、人的資源開発センター（イスラマバード）など、専門分野別の地域センターも設置されています。

参考文献

朝日現代用語『知恵蔵』朝日新聞社　2007年
内藤雅雄・中村平治編『南アジアの歴史　－複合的社会の歴史と文化－』有斐閣　2006年
* 外務省ホームページ

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