インドの仏教

インドの仏教の歴史と現状

インドは仏教発祥の地として知られていますが、現代においてその信仰は大きく変遷を遂げ、かつての隆盛から衰退を経て、再興を図っています。2011年の国勢調査によると、インドには840万人以上の仏教徒が存在し、その数は徐々に増加傾向にあります。

歴史的背景の辿り

仏教は、紀元前5世紀に釈迦牟尼が提唱した宗教であり、その教えはインド亜大陸全体に広まりました。初期の仏教は、ヒンドゥー教と近接した環境で成長し、多様な信仰との接触を通じて発展しました。しかし、13世紀以降、イスラム教徒の侵入やその影響で仏教徒は迫害を受け、大勢の寺院や精舎が破壊されました。特に、デリー・スルターン朝が支配を強めると、仏教の存在感は次第に薄れ、僅かな信者の存在に留まりました。

それにもかかわらず、仏教は完全に姿を消すことはなく、特にヒマラヤ地域やスリランカ、ネパールの一部では信仰が受け継がれていました。20世紀には、スリランカからの上座部仏教の逆輸入や、チベットからの難民の受け入れなどによって再び注目を集め、復興の兆しを見せるようになりました。

現在の仏教徒の状況

今日、インドの仏教徒の大半を占めるのは、ナヴァヤーナ仏教徒（新仏教徒）です。彼らは主にカースト制度の影響から逃れるために仏教に改宗した不可触民が多く、全体の87%を占めています。一方、残りの仏教徒の多くはヒマラヤ北東部や北部地域の伝統的な信者たちで、彼らは上座部仏教や大乗仏教などに属しています。

近年、ビームラーオ・ラームジー・アンベードカル（B. R. Ambedkar）に導かれた新たな仏教徒の運動が展開されており、多くのダリットが仏教に改宗しています。この運動は、カースト制度との戦いが背景にあり、仏教は社会的正義を求める手段の一つとなっています。

文化と教義の影響

また、仏教はその教義や文化においても独自の変遷を遂げています。初期仏教から大乗仏教、密教へと発展を遂げた過程では、インド社会や他の宗教との相互作用が顕著に見られます。特に、智慧や瞑想に重きを置く傾向があり、これがインドの仏教の一つの特色として知られています。これは、釈迦が伝えた教えが、時間を経るにつれて新たな解釈や実践方法を獲得してきたことを示しています。

また、インド国内には数多くの仏教遺跡が存在し、それらは歴史的記憶としてそして観光名所としての役割を果たしています。特に、ナーランダやサールナートは仏教の聖地として認識され、世界遺産候補にもなっています。

未来への展望

21世紀に入ってから、再び注目を浴びるようになったインドの仏教は、教育や社会運動を介して新しい信徒を獲得し続けています。特に、瞑想や修行を重視した活動が広まりつつあり、現代の宗教的多様性の中での位置を模索しています。このように、迫害や衰退を経ても、インドの仏教はその存在感を保ち続け、徐々にではありますが、確固たる再興を果たそうとしています。

最終的に、インド仏教は過去の栄光を取り戻すことができるのでしょうか。ダリットの人々が仏教を通じて新たな道を歩む中、インド仏教の未来がどう描かれるのか、今後の動きが注目されます。

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