インド地域航法衛星システム

NavIC（Navigation with Indian Constellation）とは

NavICは、インド宇宙研究機関（ISRO）の宇宙応用センター（SAC）が運用する衛星測位システムです。以前はインド地域航法衛星システム（IRNSS）と呼ばれていましたが、2016年に現在の名称に変更されました。このシステムは、地球全体ではなく、インドとその周辺地域を対象としており、7機の人工衛星によって構成されています。

開発の背景

アメリカ合衆国が運用するグローバル・ポジショニング・システム（GPS）へのアクセスが常に保証されているわけではないという状況から、インドは独自の衛星測位システムの開発を必要としました。NavICは、一般の人が利用できるスタンダード・ポジショニング・サービス（SPS）と、軍事用の暗号化された制限サービス（RS）の2つのサービスを提供します。

システムの構成

NavICシステムは、宇宙セグメント（衛星）、地上セグメント（地上局）、ユーザーセグメント（受信機）の3つの主要な要素で構成されています。インド国内での製造を目指しており、宇宙部分は7機の衛星で構成されています。

3機の衛星は、インド洋上空の静止軌道に配置されています。残りの4機は、対地同期軌道に配置されています。
この配置により、7機の衛星はインドの地上局から常に観測できる状態を維持しています。軍事的な応用として、ミサイル誘導などの重要な役割を果たすことが期待されています。

開発の歴史

最初の衛星は160億インドルピーの費用をかけて開発され、2013年7月1日にIRNSS-1Aとして打ち上げられました。その後、2016年4月28日までに計画されていた7基全ての衛星の軌道投入が完了しました。

当初の計画では、2011年末から半年ごとに1基ずつ衛星を打ち上げ、2014年までにIRNSSが完全に運用されるようになる予定でした。

IRNSS-1A: 2013年7月1日に打ち上げられた初号機。ルビジウム原子時計、測位ペイロード、Cバンド中継器を搭載。
IRNSS-1B: 2014年4月4日に打ち上げ。
IRNSS-1C: 2014年10月16日に打ち上げ。初めて静止軌道に投入。
IRNSS-1D: 2015年3月28日に打ち上げ。
IRNSS-1E: 2016年1月20日に打ち上げ。
IRNSS-1F: 2016年3月10日に打ち上げ。
* IRNSS-1G: 2016年4月28日に打ち上げられ、計画されていた7基の衛星全てが軌道投入完了。

システムの概要

IRNSSシステムは、7基の衛星（IRNSS-1A〜1G）と地上局で構成されます。3機の衛星は静止軌道に配置され、残りの4機は対地同期軌道に配置されています。これにより、インド全土をカバーし、地上局からの連続的な観測が可能となります。

衛星のペイロードには、原子時計や測位信号を収集するための電子機器が搭載されています。IRNSSの信号は、SPSとPrecision Serviceの2種類があり、どちらもL5帯とS帯を使用しています。測位信号はS帯で送信され、位相配列アンテナを使用しています。

システムの精度は、インド国内で約10メートル、インド周辺の約2000km範囲で約20メートル以上です。しかし、受信側機器が対応すれば、2.5メートルから5メートルの精度も実現可能だとされています。2つの電波帯域幅を併用することで、電離層による電波の速度遅延を測定し、位置情報の誤差を減らしています。

地上局は、衛星の軌道を追跡・評価し、ネットワークの整合性を保証するマスター・コントロール・センター（MCC）と、衛星に指令を送ってその健全性を確認するその他の地上局で構成されています。

今後の展望

NavICは、インドの測位システムとして、今後、ますますその重要性を増していくと考えられます。より高度な測位技術の開発や、対応機器の普及により、その利用範囲も広がっていくでしょう。

その他

NavICは、インドの標準時インフラも確立し、高度に独立したシステムを構築しています。

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