インペリアル・レコード (米国)

インペリアル・レコード

インペリアル・レコード（Imperial Records）は、アメリカ合衆国にかつて存在した、そして後に一時的に復活した主要なレコード・レーベルです。1946年、カリフォルニア州ロサンゼルスにて、起業家ルー・チャッドによってその歩みを開始しました。

歴史

設立と初期の展開

レーベル設立当初、インペリアルは主にメキシコ音楽に焦点を当てていました。しかし、1947年頃からは方向性を転換し、活気に満ちたリズム・アンド・ブルース（R&B）やブルースの分野に注力するようになります。この方針転換は、その後のインペリアルの歴史において極めて重要な意味を持つことになります。

ニューオーリンズとの深いつながり

インペリアルの歴史において、1949年頃の出来事は特に注目に値します。ルー・チャッドは、ニューオーリンズを拠点とする音楽家でプロデューサーでもあったデイヴ・バーソロミューをタレント・スカウト兼プロデューサーとして迎え入れました。この連携により、レーベルはニューオーリンズ固有の豊かな音楽文化に深く根ざしたアーティストの発掘と育成に乗り出します。この戦略が成功し、インペリアルはR&B、後のロックンロールのサウンドを定義する上で重要な役割を果たすことになります。

黄金期とスターたち

デイヴ・バーソロミューとの協力体制のもと、インペリアルが見出した最も輝かしい才能が、ピアニスト兼シンガーソングライターのファッツ・ドミノでした。彼のヒット曲はレーベルに計り知れない成功をもたらし、インペリアルは1950年代から60年代にかけてのR&Bおよび初期ロックンロールシーンにおいて、主要なプレイヤーとしての地位を確立します。この時期、インペリアルはファッツ・ドミノの他にも、T-ボーン・ウォーカー、スマイリー・ルイス、アール・キング、スヌークス・イーグリン、リル・サン・ジャクソンといった才能あふれるブルースやR&Bのアーティストたちと契約し、数々の名盤を世に送り出しました。

ファッツ・ドミノに続く、レーベルのもう一人の看板スターとなったのが、ロックンロール・アイドルのリッキー・ネルソンです。彼の甘い歌声とルックスは若い世代を中心に絶大な人気を集め、多くのヒット曲を連発しました。リッキー・ネルソンの成功は、インペリアルの商業的な勢いをさらに加速させ、レーベルの黄金期を支えました。

拡大と転換期

インペリアルは事業拡大にも積極的でした。1961年にはアラディン・レコードを、1963年にはミニット・レコードを買収し、自身のレーベル傘下に加えました。しかし、この拡大期にもかかわらず、インペリアルは大きな転換期を迎えます。1963年、レーベルの二枚看板であったファッツ・ドミノとリッキー・ネルソンが、相次いで競合他社のレーベルへ移籍するという事態が発生しました。この主要アーティストの離脱を機に、設立者のルー・チャッドはインペリアルをリバティ・レコードへ売却し、レーベル経営から身を引くことを決断しました。

リバティ、そしてUA傘下へ

リバティ・レコードの新体制の下、インペリアルは所属アーティストの再編成に着手しました。この過程で、これまでのブルースやR&Bを中心とした一部のアーティストは契約を失いました。一方で、当時の音楽トレンドの変化に対応するため、イギリスのホリーズのようなブリティッシュ・インヴェイジョン系のバンドが新たにラインアップに加えられ、レーベルの顔ぶれは変化しました。

しかし、インペリアルの所有権はさらに移転します。1968年、リバティはユナイテッド・アーティスツ・レコード（UA）と合併しました。UA傘下では、インペリアル所属のアーティストたちがリバティ・レーベルへと移籍する動きが加速しました。結果として、1970年代に入る頃には、インペリアルはかつてのような活力を失い、レーベルとしての実質的な活動を停止し、存在感をほぼ失いました。

権利の変遷と現在

1979年には、インペリアルを含むUA傘下の音楽資産がEMIによって買収されました。EMIはこれらの貴重な音源を管理することになります。その後、2006年にEMIはインペリアル・レコードの名を冠したレーベルを一時的に復活させました。現在、インペリアル・レコードの音源およびその権利は、世界最大の音楽企業であるユニバーサル ミュージック グループが管理しています。

インペリアル・レコードは、その活動期間を通じて、特にアメリカ南部のR&Bやニューオーリンズ・サウンド、そして初期のロックンロールの発展において、極めて重要な役割を果たしました。ファッツ・ドミノやリッキー・ネルソンをはじめとする多くの才能を世に送り出し、20世紀アメリカのポピュラー音楽史に確固たる地位を築いたレーベルと言えます。

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