イヴァーニア (客船・初代)

イヴァーニア（SS Ivernia）は、19世紀末にキュナード・ラインによって建造された中級船舶です。1899年、イギリスのニューカッスル・アポン・タインにあるスワン・ハンター造船所でその姿を現しました。その特徴的な巨大な煙突は、当時としては際立った存在感を示していました。

イヴァーニアは、主に移民を輸送する目的で使用され、当初はリヴァプールとボストンを結ぶ航路で運航されました。その後、トリエステとニューヨーク間の航路へと変更され、多くの人々が新天地を目指す旅を支えました。大西洋を横断するこの航路は、多くの移民にとって希望と不安が入り混じる特別な旅路でした。

しかし、その平和な運航は長くは続きませんでした。1914年に第一次世界大戦が勃発すると、イヴァーニアはイギリス政府に徴用され、輸送船として軍事作戦に投入されることになりました。それまでの移民輸送船としての役割から一転、兵士や物資を運ぶ重要な任務を担うことになったのです。

そして、1917年1月1日、イヴァーニアは悲劇に見舞われます。ギリシャのマタパン岬沖南東58マイルの地点で、ドイツの潜水艦UB-47からの攻撃を受けました。魚雷が命中したイヴァーニアは、わずか1時間足らずで海の底へと沈んでいきました。この攻撃により、多くの乗員乗客が命を落とし、生存者はクレタ島に流れ着くという悲惨な状況となりました。この沈没事故で120名もの犠牲者が出ました。

特筆すべき点として、イヴァーニアの船長を務めていたのは、ウィリアム・トーマス・ターナー、通称「ボーラー・ビル」ターナーでした。彼は、1915年5月7日に発生した客船ルシタニア撃沈事件の際にも船長を務めており、その経験から彼は多くの注目を集めました。ルシタニアの悲劇に続いて、イヴァーニアもまた戦争の犠牲となったことは、歴史に深く刻まれることとなりました。

イヴァーニアの沈没は、第一次世界大戦における海戦の悲惨さを象徴する出来事の一つであり、民間船舶が戦時下においていかに危険に晒されるかを物語っています。移民を運び、そして軍事輸送を担ったイヴァーニアの物語は、平和な時代の終わりと、戦争の残酷さを現代に伝えているのです。

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