イヴォ・ヨシポヴィッチ

イヴォ・ヨシポヴィッチ:クロアチアの多才な政治家、法律家、音楽家



イヴォ・ヨシポヴィッチ(Ivo Josipović、1957年8月28日生まれ)は、クロアチア政治家であり、法律家、音楽家、作曲家、大学教授としても知られています。2010年から2015年までクロアチアの大統領を務め、その間、国内の法制度改革や国際的な紛争解決に貢献しました。

生い立ちと教育



ヨシポヴィッチはザグレブで生まれ、幼少期にはサッカー選手を目指していました。しかし、その後ザグレブ大学に進学し、法学部で学びました。1980年に卒業後、司法試験に合格し、1985年には刑法で修士号、1994年には犯罪科学で博士号を取得しました。彼の学術的な才能は早くから開花し、1984年からはザグレブ大学法学部で教鞭を執り、刑事訴訟法、国際犯罪法、軽犯罪法の教授として後進の指導にあたりました。

法学の世界での活躍



ヨシポヴィッチは、数多くの権威ある学術機関で客員教授を務めました。ドイツのマックス・プランク外国・国際刑法研究所、オーストリアグラーツ大学刑法研究所、フィンランドのHEUNI研究所などで研究活動を行い、その知見を広めました。また、ドイツのマックス・プランク外国・国際私法研究所やアメリカのイェール大学でも研究者として過ごし、国際的な法学研究に貢献しました。彼はクロアチア国内外の多数の法学関連団体に所属し、85本を超える学術論文を発表しています。

1994年には、私立のクロアチア法律センターの共同設立者となり、法曹界の発展に寄与しました。ユーゴスラビア紛争時には、セルビア人強制収容所に捕らわれたクロアチア人捕虜の救出活動に尽力し、国際司法裁判所(ICJ)や旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷(ICTY)でクロアチア代表を務めました。さらに、欧州評議会の専門家として、ウクライナ、モンゴル、アゼルバイジャンの刑務所評価にも携わるなど、国際的なプロジェクトにも積極的に参加しました。

音楽家としての才能



ヨシポヴィッチは音楽の才能にも恵まれ、音楽学校で中等教育を受けた後、ザグレブ音楽アカデミーで作曲を学びました。1983年に作曲科を卒業し、1987年から2004年まで同アカデミーで講師を務めました。彼は様々な楽器やオーケストラのために50以上の楽曲を作曲し、1985年には「Samba da Camera」で欧州放送連合の1等賞を受賞しました。1999年と2000年には、それぞれ「Samba da Camera」と「Tisuću lotosa」でポリン賞を受賞するなど、音楽家としても高い評価を得ています。彼の代表的な作品には、「Igra staklenih perli」や「Tuba Ludens」などがあり、これらの楽曲はクロアチア国内外で広く演奏されています。1991年からは、ザグレブ音楽ビエンナーレ(MBZ)の監督を務めています。

政治家としてのキャリア



ヨシポヴィッチは1980年にクロアチア共産主義者同盟に入党し、党の民主化に尽力しました。1994年に政界を離れましたが、2003年にイヴィツァ・ラチャンの要請で政界に復帰し、社会民主党所属の議員としてクロアチア議会で活動しました。2005年にはザグレブ市議会議員にも選出され、2007年にはクロアチア議会議員に再選されました。2009年にはクロアチア大統領選挙に社会民主党の公認候補として立候補しました。

大統領として



2009年12月27日の大統領選挙第1回投票で首位となり、2010年1月10日の決選投票で勝利し、第3代クロアチア大統領に就任しました。大統領として、彼は「新しい正義」を掲げ、不正や汚職、組織犯罪に対する社会や法の枠組みの改革を訴えました。また、個人の権利、平等、人権、正義、勤勉さ、社会的共感、創造性などを重視する政策を推進しました。2015年に大統領を退任しました。

イヴォ・ヨシポヴィッチは、法学、音楽、政治の分野で顕著な才能を発揮し、クロアチア社会に多大な貢献をした人物として記憶されています。

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