イヴリン・ベアリング (初代クローマー伯爵)

イヴリン・ベアリング（初代クローマー伯爵）の生涯

イヴリン・ベアリング（1841年2月26日 - 1917年1月29日）は、イギリスの政治家、外交官、そして軍人であり、エジプトの英軍占領後の実質的な統治者として名を馳せました。彼は1841年にイングランド・ノーフォークのクローマーで生まれ、銀行家で政治家の家庭に育ちました。彼の家族は、18世紀初頭にドイツから移住し、ベアリングス銀行を創設したという歴史を有する一族です。

陸軍でのキャリア

ベアリングはウーリッジの王立陸軍士官学校を卒業し、王立砲兵隊に入隊しました。1858年には英領イオニア諸島に派遣され、1861年にはその総督の副官として活動しました。彼の軍歴は主にインドに関連し、1872年から1876年は英領インドでトマス・ベアリングの私設秘書を務めました。

エジプトにおける経済政策

エジプトの経済は複雑な状況にあり、1876年にはエジプトの副王イスマーイール・パシャが財政的に困難な状況に陥ります。この時、イギリスとフランスが共に「公債整理委員会」を設置し、ベアリングもその英国側の委員として参加しました。彼はエジプトにおける財政復興と共に、ヨーロッパ的な政策が推進される中で強力な影響力を行使しました。

エジプトの総領事としての統治

1883年、ベアリングはエジプト総領事に就任し、実質的にエジプトを統治することになりました。彼はイギリス人を行政に抜擢し、個々の省庁を指導しました。また、彼が行った財政改革は特に大きな成果を上げ、エジプトの歳入を増加させ、黒字を達成することに成功しました。しかし、彼の統治スタイルには批判も多く、特に教育の推進や現地住民への配慮が欠けていました。

反英運動の高まり

彼の統治の後半に入ると、エジプト国内での反英的な民族主義運動が高まり、1906年のデンシャワイ事件ではその反発が顕著化しました。この運動は本国の自由党政権にも影響を及ぼし、ベアリングは1907年にエジプト総領事を辞任します。

晩年と著作

エジプトを去った後、彼は貴族院の自由党議員として活動し、第一次世界大戦中にはガリポリの戦いの敗因究明委員会の委員長に就任しました。彼は帰国後に『モダーン・エジプト』を著し、これは植民地政策における重要な文書として多くの国で読まれました。1917年にインフルエンザによりロンドンで亡くなるまで、彼はイギリスの政界で活躍しました。

家族と栄典

1876年に結婚したエセルとの間に二人の息子をもうけ、その後再婚してキャサリンとの間に息子をもうけました。彼は1892年に初代クローマー男爵に叙され、その後も多くの名誉を受けました。彼の影響力と生涯は、イギリスの植民地支配における重要な一例として語り継がれています。

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