イーゴリ・ジャロシンスキー

イーゴリ・エヒエレヴィチ・ジャロシンスキー

イーゴリ・エヒエレヴィチ・ジャロシンスキー（1931年2月1日 - 2021年7月14日）は、ソビエト連邦とアメリカ合衆国で活躍した著名な理論物理学者である。特に磁性、マルチフェロイクス、一次元導体、液晶、ファンデルワールス力、場の量子論の適用に関する研究で広く知られ、その業績は現代物理学に多大な影響を与えた。ジャロシンスキーは、彼の名前を冠した「ジャロシンスキー・守谷相互作用」によっても名を馳せている。

生い立ちと学歴

ジャロシンスキーはモスクワにてユダヤ人の家庭に生まれた。父親のイェチエル・モイセーヴィチはウクライナ出身で、第二次世界大戦中に捕虜として命を落とした。彼は家族初の大学進学者となり、1953年にモスクワ大学物理学部を卒業。その後、ソビエト科学アカデミーの物理学研究所にて大学院の研究を続け、1957年には弱強磁性についての論文で、科学博士候補学位を取得した。弱強磁性は、反強磁性材料における特定の方向で見られる小さな自発磁気モーメントの現象で、結晶の対称性に基づく交換相互作用と関係している。

1962年に博士論文を提出し、統計物理学における場の量子論の手法に関する研究を行い、科学博士号（ハビリテーション）を取得した。彼は1964年にモスクワのランダウ理論物理学研究所の創設メンバーとして加入し、その後も様々な教育機関で教鞭を執った。

研究業績

1958年から1961年にかけて、ジャロシンスキーはアレクセイ・アブリコソフ、レフ・ゴルコフとともに、場の量子論の手法を用いて超伝導に関する重要な研究を行った。1961年には、これらの成果をまとめた教科書『統計物理学における場の量子論の方法』を出版し、英語版は1963年、日本語版は1970年にそれぞれ刊行された。

また、彼は多くの重要な研究を通じて、ファンデルワールス力や一次元導体における超伝導に関する問題に取り組んだ。さらに、1970年代には一次元フェルミ粒子系における朝永-ラッティンジャー液体問題に関する理論を発表した。

1991年にアメリカに移住し、カリフォルニア大学アーバイン校の教授に就任。その後のキャリアでは、磁気光学の時間パリティの破れや、フェルミ液体と非フェルミ液体の物理学に関する研究を行った。彼の研究は、有限温度における輸送現象や相転移、松原形式の形式化など、多岐にわたる。

賞歴と栄誉

ジャロシンスキーの業績は評価され、1972年にはロモノソフ賞、1975年にはソビエト名誉勲章、1981年には労働赤旗勲章、1984年にはソビエト連邦国家賞、1989年にはランダウ金賞を受賞した。また、1974年にソビエト科学アカデミーの通信会員、1991年にアメリカ芸術科学アカデミーの名誉外国人会員、1996年にはアメリカ物理学会のフェローとして選出されるなど、多くの名誉を受けた。

私生活

ジャロシンスキーは1960年に結婚し、彼の死後には未亡人、娘、孫娘、ひ孫が残された。彼の学問的影響は、物理学の分野における理論的な進展にとって重要なものであり続けている。ジャロシンスキーの業績は、今後も多くの研究者に受け継がれていくことでしょう。

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