イーサネット・クロスオーバー・ケーブル

イーサネットクロスオーバーケーブルとは

イーサネットクロスオーバーケーブルは、ツイストペアケーブルの一種で、両端のコネクタにおける送受信ピンが交差するように接続されているケーブルです。一般的には「クロスケーブル」とも呼ばれます。一方、両端のコネクタが同じピン配置で接続されているケーブルは「ストレートケーブル」と呼ばれます。

2022年現在、一般的に使用されるLANケーブルの多くはストレートケーブルです。クロスケーブルは特定の用途に限定されており、以前ほど利用される機会は少なくなっています。

クロスケーブルの用途

10BASE-Tや100BASE-TXといった古いイーサネット規格では、ケーブル内の4つのツイストペアのうち、送信用と受信用に割り当てられる配線が独立していました。そのため、1990年代には、接続する機器の仕様に合わせてケーブルの終端結線を変更する必要がありました。

具体的には、ストレートケーブルはMDI機器とMDI-X機器を接続するために使用され、クロスケーブルはMDI同士、またはMDI-X同士の機器を接続するために使用されました。たとえば、ハブ(MDI-X)同士をカスケード接続する場合や、2台のパソコン(MDI)を直接接続する場合、プリントサーバー(MDI)とパソコン(MDI)を直接接続する場合などに、クロスケーブルが用いられました。また、一部のADSLモデムやCATVモデムでも、パソコンを直接接続する際にクロスケーブルが必要となる場合がありました。

クロスケーブルの必要性の減少

1999年に登場した1000BASE-Tでは、機器同士の送受信ピンを自動判別する機能(Auto MDI/MDI-X)が規格に取り入れられました。この機能により、接続された機器の一方が対応していれば、10BASE-Tや100BASE-TXの通信においてもストレートケーブルを使用できるようになりました。

そのため、現在ではクロスケーブルを使用する場面はほとんどなくなり、代わりにストレートケーブルが広く使用されています。Auto MDI/MDI-X機能によって、接続する機器の仕様を気にすることなく、ケーブルの種類を気にせずにネットワークを構築できるようになったのです。

クロスオーバーの方式

ツイストペアケーブルは、4対の差動配線で構成され、それぞれの配線色はANSI/TIA-568|ANSI_TIA-568によって規定されています。
クロスオーバー（交差接続）にはいくつかの方式があります。ここでは、コネクタのピン番号を以下のように定義し、それぞれの方式について説明します。

ハーフクロス結線

橙ペアと緑ペアを交差接続する方式で、100BASE-TX、10BASE-T、100BASE-T2で使用できます。使用するピンは1、2、3、6番です。この方式では、ケーブルの両端はANSI/TIA-568|ANSI_TIA-568によってT568AまたはT568Bと名付けられた結線規格に従って終端処理されます。

フルクロス結線

ハーフクロスの接続に加えて、青ペアと茶ペアを交差接続する方式です。1000BASE-T、100BASE-TX、10BASE-T、100BASE-T4で使用できます。これにより、より多くのピンを使用し、より高速な通信に対応できるようになります。

1000BASE-TX クロスケーブル

1000BASE-TXでは、青ペアと茶ペアの接続において、極性を入れ替える方式が採用されていました。しかし、1000BASE-TX自体が普及しなかったため、この方式のクロスケーブルはほとんど使われていません。

まとめ

イーサネットクロスオーバーケーブルは、古いネットワーク環境では必須のケーブルでしたが、Auto MDI/MDI-X機能の普及により、現在では使用頻度が大幅に減少しています。ほとんどの場合、ストレートケーブルで対応可能であり、クロスケーブルを使用する機会は限られています。しかし、古い機器を使用する際や、特殊な接続環境ではクロスケーブルが必要になる場合があるため、その存在と役割を理解しておくことは重要です。

もう一度検索