イージス弾道ミサイル防衛システム

イージス弾道ミサイル防衛システム（イージスBMD）

イージス弾道ミサイル防衛システム（イージスBMDシステム、英語: Aegis Ballistic Missile Defense System）は、イージス艦を基盤とした弾道ミサイル防衛（Ballistic Missile Defence, BMD）システムです。

来歴

元々、イージス武器システム（AWS）は、航空機や対艦ミサイルからの脅威に対抗するために開発されました。しかし、ソ連崩壊後に弾道ミサイルとその関連技術が拡散したことで、弾道ミサイル防衛の必要性が高まりました。

1993年、クリントン政権下で、アメリカ本土を防衛する国家ミサイル防衛（NMD）と、同盟国や海外展開米軍部隊を防衛する戦域ミサイル防衛（TMD）の2つを柱とする体制が構築されました。イージス艦は、この海上配備システムのプラットフォームとして期待されるようになりました。

ブッシュ政権下では、大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散に対処するため、BMDが推進されました。弾道ミサイルの飛翔段階をブースト、ミッドコース、ターミナルの3段階に区分し、それぞれに対処するシステムを整備する方針が採られました。イージスBMDは、ミッドコース迎撃を担当する海上配備システムとして開発が進められました。

イージスBMDシステムは、アメリカ国防総省ミサイル防衛局とアメリカ海軍が主導し、日本も開発に参加しています。アメリカ海軍と海上自衛隊が導入しています。

構成

イージスBMDは、従来のAWSとは異なる独自のバージョン管理がなされています。開発にはスパイラルモデルが採用されています。

イージスBMD 3.0シリーズ

第一段階として、短距離弾道ミサイル（SRBM）および準中距離[[弾道ミサイル]]（MRBM）への迎撃能力が整備されました。

BMD 3.0E: 遠距離の捜索・追跡機能を実装。
BMD 3.0: SM-3ブロックIによる交戦機能を追加。
BMD 3.6: SM-3ブロックIAに対応。実戦的な交戦機能を備える。VGIシステム導入、C&Dに補助コンピュータ追加、Mk.41発射機を強化。
BMD 3.6.1: 初期的なLOR（Launch on Remote）を導入。

イージスBMD 4.0シリーズ

第二段階として、迎撃ミサイルをSM-3ブロックIBに更新。SRBM・MRBMに加え、限定的ながら中距離[[弾道ミサイル]]（IRBM）への迎撃能力を付与。LOR機能の拡張、新型BSP導入によるレーダー信号処理能力強化。

イージスBMD 5.0シリーズ

BMD 4.0をAWSベースライン9.C1と統合。対空戦（AAW）機能とミサイル防衛（BMD）機能を同時に使用可能に。IAMD（integrated air and missile defense）を実現。

BMD 5.0CU: SM-6の運用に対応し、終末段階での弾道ミサイル迎撃も可能。
BMD 5.1: AWS ベースライン9.C2と統合。SM-3ブロックIIAに更新し、IRBMへの本格的な対処能力を獲得。EOR（Engage on Remote）に対応。

迎撃ミサイル

当初、イージス艦によるTMDは、下層防衛のSM-2ERブロックIVA（NAD）と、上層防衛のSM-3（NTW）の2種類が存在しました。NAD中止後、NTWとイージスBMDは同義として扱われるようになりました。

現在、SM-2ERブロックIVAにかわる下層防衛用の迎撃ミサイルとして、SM-6を用いたSBT（sea-based terminal）の実験が行われています。

フライト・テスト

2002年以降、SM-3を用いた大気圏外での迎撃実験が多数行われ、高い成功率を収めています。また、海上自衛隊も迎撃実験に参加し、実績を上げています。2008年には、軌道を外れた人工衛星USA-193をSM-3ブロック1Aで撃墜しました。2020年には、SM-3ブロック2Aが大陸間[[弾道ミサイル]]（ICBM）標的の撃墜に成功しました。

配備

アメリカ海軍

2011年時点で、多数のタイコンデロガ級巡洋艦とアーレイ・バーク級駆逐艦がBMD能力を獲得しています。今後もBMD能力獲得艦の増勢が計画されています。

日本

1993年以降、ミサイル防衛能力について本格的な検討を開始しました。こんごう型護衛艦へのイージスBMDシステム搭載、あたご型護衛艦の改修、まや型護衛艦へのBMD5.1搭載など、段階的にBMD能力を強化しています。また、SM-3ブロック2Aの開発にも参加しています。

ヨーロッパ

欧州ミサイル防衛システム（EPAA）の一環として、BMD対応イージス艦と陸上型システムであるイージス・アショアが導入されています。EPAAは、2011年から2020年にかけて漸進的に進められています。

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