イーストマン・ジョンソン

イーストマン・ジョンソン（Jonathan Eastman Johnson, 1824年7月29日 - 1906年4月5日）は、アメリカ合衆国の画家であり、19世紀のアメリカ美術を語る上で欠かせない人物です。彼は、ヨーロッパで美術を学んだ初期のアメリカ人画家の一人として知られ、風景画、肖像画、そして特にアメリカ南部の生活を描いた作品で名を馳せました。

生涯とキャリア

メイン州のオックスフォード郡、ラヴェルで生まれたジョンソンは、幼少期を父親が務める州務長官のオフィスがあるオーガスタで過ごしました。1840年代初頭にはボストンで版画出版業者で働いた後、著名な詩人ヘンリー・ワズワース・ロングフェローの支援を受け、肖像画家としてのキャリアをスタートさせました。この時期には、アメリカの著名人たちの肖像画を数多く手がけ、その才能を発揮しました。

1849年、ジョンソンはアメリカ美術愛好家の団体の支援を受けて、ジョージ・ヘンリー・ホールと共にドイツのデュッセルドルフへ渡り、デュッセルドルフ美術アカデミーに入学しました。ハインリヒ・ミュッケに師事し、同地で学んでいたエマヌエル・ロイツェからも個人指導を受けました。1852年には、デュッセルドルフの美術家協会「Malkasten」の会員にもなっています。また、1851年のロンドン万国博覧会に参加した後、1855年までオランダのデン・ハーグを拠点とし、アメリカ大使のオーガスト・ベルモントから支援を受けました。ヨーロッパ滞在の最後には、パリでトマ・クチュールに師事し、さらにその画力を磨きました。

1855年にアメリカに帰国したジョンソンは、ワシントン、オハイオ州のシンシナティ、ウィスコンシン州のスペリオルなどを転々としながら、風景画やアメリカ先住民の生活を題材にした作品を描きました。1859年にはニューヨークに自身のスタジオを構え、この年に発表した『南部の黒人の生活』は、彼の代表作として広く知られるようになりました。この作品は、当時のアメリカ社会における黒人たちの生活をリアルに描写しており、大きな反響を呼びました。同年にはナショナル・アカデミー・オブ・デザインの準会員に選出され、翌年には正会員となっています。ジョンソンは、作品制作に励む傍ら、メトロポリタン美術館の設立にも貢献しました。

作品の特徴と影響

ジョンソンの作品は、ヨーロッパで学んだ確かな技術と、アメリカの現実を捉えたテーマが特徴です。特に、彼の描いた肖像画は、対象の人物の内面を深く掘り下げており、その高い描写力は多くの人々を魅了しました。また、アメリカ南部の生活を描いた作品は、当時の社会状況を反映しており、歴史的な資料としても価値が高いとされています。ジョンソンの作品は、アメリカ美術におけるリアリズムの発展に大きく貢献し、後世の画家たちにも大きな影響を与えました。

主要作品

南部の黒人の生活：アメリカ南部の黒人たちの生活を詳細に描いた作品で、彼の代表作として知られています。
老夫婦の農場：アメリカの農村風景を暖かく描き出した作品。
リンカーン大統領の肖像画：アメリカの歴史的な人物を描いた肖像画。
カナダの先住民の生活：ジョンソンが旅行中に描いた、カナダ先住民の日常生活を捉えた作品。

参考文献

Thomas W. Gaethgens: Bilder aus der Neuen Welt. Amerikanische Malerei des 18. und 19. Jahrhunderts Prestel, München 1988, ISBN 3-7913-0879-3, S. 311.
Stephan Koja: America. Die Neue Welt in Bildern des 19. Jahrhunderts. Prestel, München 1999, ISBN 3-7913-2051-3, S. 180–181 und S. 264.

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