イード・アル＝フィトル

イード・アル＝フィトル（アラビア語: عيد الفطر ʿīd al-fiṭr）は、イスラム暦におけるシャウワール月の1日に祝われる、イスラム教徒にとって非常に重要な祝祭です。この祭りは、ラマダーン月の終了を祝うもので、断食（サウム）明けを意味します。アラビア語で「イード」は祝祭を、「フィトル」は断食の終わりや斎戒の解除を意味します。

この祭りは、単に断食が終わったことを祝うだけでなく、精神的な成長と自己鍛錬の達成を祝うものでもあります。ラマダーン期間中、イスラム教徒は日の出から日没まで飲食を断ち、信仰に専念します。イード・アル＝フィトルは、この期間の終わりを告げ、神への感謝と喜びを表現する機会となります。

イード・アル＝フィトルは、ヒジュラ暦の第12月であるズー・アル＝ヒッジャの初めに行われるイード・アル＝アドハー（犠牲祭）と並ぶ、イスラム教における二大祭の一つです。イード・アル＝アドハーは4日間にわたって祝われるため「大イード」と呼ばれるのに対し、イード・アル＝フィトルは3日間の祝祭であるため「小イード」とも呼ばれます。

祭りの間、イスラム教徒はタクビール（神を讃える言葉）を唱え、モスクで特別な礼拝を行います。また、家族や親族、友人たちが集まり、ご馳走を振る舞い合います。特に子供たちは、この日にお小遣い（エイドゥイーディーヤ）をもらう習慣があり、日本のお年玉に似た側面を持っています。

服装に関しても、多くの人がこの日のために新しい服を用意します。地域によっては、マアムールのような伝統的な焼き菓子を作って食べる習慣もあります。マアムールは、デーツ餡などを詰めた、イードの時期には欠かせないお菓子です。イード・アル＝フィトルは、イスラム教徒にとって、家族との絆を深め、社会全体で喜びを分かち合う特別な日です。日本における「ハレの日」に相当するといえるでしょう。

また、ブルネイのイスタナ・ヌルル・イマン（王宮）は、イード・アル＝フィトルの際に一般開放され、多くの人々が訪れます。

イード・アル＝フィトルは、イスラム教徒にとって最も重要な祝祭の一つであり、その文化的な重要性は計り知れません。この祭りは、信仰、家族、そしてコミュニティの結束を象徴し、世界中のムスリムによって祝われています。

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