イ号一型丙自動追尾誘導弾

イ号一型丙自動追尾誘導弾

イ号一型丙自動追尾誘導弾は、大日本帝国陸軍が開発した音響誘導式の滑空誘導弾で、戦時中の技術革新を象徴するものとなっています。この誘導弾の開発は、1944年5月下旬にビアク島の戦いにおける無謀な体当たり攻撃を受けて始まりました。当時、高田勝重少佐が指揮する陸軍飛行第5戦隊は敵艦船への直接攻撃を行ったが、その結果は非常に悲惨でした。これを受け、技術者たちは「戦死が確実な体当たり攻撃は不名誉である」と考え、新しい発想である親子飛行機構想を提案しました。

この提案を受けて、第一陸軍航空技術研究所の大森丈夫航技少佐と第二陸軍航空技術研究所の小笠満治少佐がイ号一型丙の計画を進めることとなりました。1944年の春には、同じく開発が進められていたイ号一型甲およびイ号一型乙とともに、陸軍航空本部による正式な研究が始まりました。その後、1944年9月5日には、陸海民の科学技術を統合するために設立された陸海技術運用委員会の一環として、イ号の研究も行われました。

1945年3月には久慈浜爆撃試験場で原型機の投下実験がスタートし、得られたデータを元に誘導装置や安定装置の改良が進められました。その後、同年7月からは琵琶湖へと移動し、改良試験機による誘導装置なしの投下実験を実施しましたが、誘導装置を装備した状態での投下実験は、終戦を迎えるまでに実施できることはありませんでした。戦争の終結までに製造されたのは原型機3機と改良試験機20機でした。

性能

イ号一型丙自動追尾誘導弾の性能は、設計や構造において他の誘導弾と一線を画しています。その全長は3.5メートル、直径は0.5メートルで、空中での安定性を確保するために十字型の主翼と尾翼が配置されています。これらの設計は、空気抵抗を最小限に抑え、より正確な飛行を可能にします。

特筆すべきはその誘導方式です。同時期に開発されたイ号一型甲やイ号一型乙が推進装置を備えているのに対し、イ号一型丙には推進装置がないため、初期段階での飛行機からの投下が行われました。実験では、四式重爆撃機への搭載が行われ、発射後は自動で移動することが可能でした。誘導装置としては、砲火の衝撃波により発生する音響高調波を利用し、その信号を解析して飛行方向を決定する仕組みが取り入れられています。具体的には、マイクロフォンが3から5ヘルツの音響を捉え、衝撃感応ホーミング装置としての機能を果たしました。

さらに、原型機には6個の姿勢安定用ジャイロが搭載され、改良試験機では1個追加されて計7個となっています。これにより、飛行中の姿勢をより厳密に制御することが可能となり、最終的にはより高い精度での目標到達が期待されたのです。

今後、この技術がどのように発展し、またどのように戦争の戦略に寄与したかは、様々な研究によって解明されることが期待されています。

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