高調波

高調波とは

高調波とは、ある基本となる周波数成分（基本波）に対して、その整数倍の周波数を持つ波の成分のことです。例えば、基本波が100Hzの場合、200Hzが第2高調波、300Hzが第3高調波となります。音楽や音響工学の分野では、高調波は「倍音」と呼ばれており、音色の特徴を決定づける重要な要素です。

基本波の周波数を f とすると、第 n 高調波の周波数は n f で表されます。波長は周波数に反比例するため、第 n 高調波の波長は基本波の波長の 1/n となります。

各分野における高調波

高調波は、電気工学、無線工学、機械工学など、様々な分野で重要な役割を果たしています。

電気工学

電気工学における高調波は、主に電源周波数の整数倍で発生し、電気機器の動作に悪影響を与えることがあります。特に、以下の要因で高調波が発生しやすいです。

DC電源回路の平滑コンデンサ: 平滑コンデンサは、整流された直流電圧を滑らかにするために使用されますが、電流波形を歪ませ、高調波を発生させます。
インバーターのPWMスイッチング回路: インバーターは、直流電力を交流電力に変換する回路ですが、PWM（パルス幅変調）スイッチングにより、波形が歪み、高調波を発生させます。

これらの高調波は、電源の力率を低下させたり、電子回路の誤動作や停電を引き起こす可能性があります。そのため、技術基準によって規制されており、適切な対策を講じることが重要です。また、電源線の中性線は高調波成分を大地へ戻す役割も担っています。

無線工学

無線工学では、発振回路において基本波の 1/n の周波数から、意図的に歪み特性を持った回路を通して高調波を発生させ、目的の周波数の信号を得る「逓倍」という技術が用いられます。PLL（フェーズロックドループ）回路も同様の原理でn倍の周波数を作り出すことができます。

一方で、無線機から送信される電波には、目的の信号以外に高調波や低調波などの不要な成分（スプリアス）が含まれている場合があります。スプリアスの強度は電波法によって制限されており、スペクトラムアナライザを用いて計測されます。

機械工学

機械工学においても、高調波は振動や騒音の原因となることがあります。例えば、歯車のかみ合わせ振動では、回転数と歯数を掛け合わせた周波数の他に、その高調波が発生します。平歯車の場合は斜歯歯車や山歯歯車を、傘歯車の場合は斜歯傘歯車や曲歯傘歯車、ハイポイドギヤを用いることで高調波の発生を抑制できます。

また、歯に損傷がある場合や、蒸気機関、内燃機関などのリンク機構において、共振によって高調波が発生することがあります。高速回転体でも軸周りで共振し、高調波が発生する可能性があります。

高調波の対策

高調波は様々な分野で問題を引き起こす可能性があるため、適切な対策が必要です。以下は一般的な対策方法です。

フィルタ回路の導入: 高調波を減衰させるフィルタ回路を導入することで、ノイズや歪みを低減できます。
アクティブフィルタ: 高調波を打ち消す信号を生成するアクティブフィルタを用いることで、より効果的に高調波を抑制できます。
機器の設計の見直し: 高調波が発生しにくいように、機器の設計を見直すことも重要です。

対義語

高調波の対義語は「低調波」です。低調波は、基本波の周波数の整数分の1の周波数成分を指します。

関連用語

全高調波歪（THD）
第二次高調波発生
フーリエ級数
誘導障害

外部リンク

電気設備に高調波が及ぼす影響（ECCJ）（2010年1月28日時点のアーカイブ）
高調波とは！
* 高調波とは

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