ウァレンティニアヌス2世

ウァレンティニアヌス2世:西ローマ帝国を揺るがした皇帝の生涯と謎の死



ウァレンティニアヌス2世(371年-392年)は、西ローマ帝国皇帝ウァレンティニアヌス1世の息子として、激動の時代に生まれた皇帝です。幼少期から権力闘争に巻き込まれ、その生涯は常に影に覆われ、最後は不可解な死を遂げました。本稿では、彼の生涯と死を取り巻く状況を詳細に検討します。

幼少期と帝位継承



ウァレンティニアヌス2世は、西ローマ皇帝ウァレンティニアヌス1世と2番目の妻ユスティナとの間に生まれました。異母兄には既に皇帝位に就いていたグラティアヌスがおり、他にも数人の姉妹がいました。375年、父ウァレンティニアヌス1世が急死すると、イリュリクムの軍団が反乱の兆しを見せました。この混乱の中、フランク人老臣メロバウデスは、シルミウムにおいてグラティアヌスの共同皇帝としてウァレンティニアヌス2世を擁立、軍の鎮圧に成功しました。しかし、幼少の皇帝に代わって、実質的な政治は母ユスティナやメロバウデスなどのフランク人老臣らによって行われました。メディオラヌムが宮廷として置かれましたが、彼自身の政治力は限定的でした。

権力闘争とテオドシウス1世への依存



378年、ウァレンティニアヌス2世の叔父であるウァレンスが東方で戦死すると、グラティアヌスはテオドシウス1世を東ローマ皇帝に任命しました。しかし383年、グラティアヌス自身もマクシムスとの戦いで敗死。ウァレンティニアヌス2世は一旦マクシムスと講和し、共同皇帝として迎え入れましたが、387年にはイタリアを追われ、東ローマ皇帝テオドシウス1世の庇護を求める羽目になります。

姉妹をテオドシウスに差し出すという、異例の手段で支援を取り付けたウァレンティニアヌス2世は、翌年、テオドシウスの軍事力によってマクシムスを打倒され、帝位を回復しました。しかし、この回復は、テオドシウスへの絶対的な依存を意味していました。テオドシウスはメディオラヌムに留まり、西ローマ帝国の政治は事実上彼の影響下におかれ、ウァレンティニアヌス2世は傀儡皇帝にすぎませんでした。コインの裏面にはテオドシウスの肖像が刻まれ、その支配の現実を象徴的に示していました。

アルボガストとの対立と謎の死



成長したウァレンティニアヌス2世は、テオドシウスへの依存と、彼の忠実な将軍アルボガストの専横に不満を持つようになりました。アルボガストはテオドシウスにのみ忠誠を誓い、ウァレンティニアヌス2世には高圧的に接しました。ウァレンティニアヌス2世がアルボガストの解任を試みると、アルボガストはこれを拒否。ついに、テオドシウスに苦情を申し立てましたが、392年5月15日、ヴィエンヌの宮殿で死亡しているのが発見されました。

彼の死は、自殺か、アルボガストによる暗殺か、現在に至るまで議論が続いています。様々な説が唱えられていますが、確たる証拠はなく、真相は闇の中です。

死後の影響



ウァレンティニアヌス2世の死によって西ローマ皇帝の座が空位になると、アルボガストはテオドシウスに、彼の息子アルカディウスを皇帝にすることを提案しましたが、テオドシウスは返答しませんでした。結果としてアルボガストは、エウゲニウスを皇帝に擁立しました。ウァレンティニアヌス2世の死は、西ローマ帝国の動乱をさらに深めることになったのです。

まとめ



ウァレンティニアヌス2世の生涯は、権力闘争と政治的陰謀に満ちたものでした。幼少期からの不幸な運命、テオドシウス1世への依存、そして謎の死は、西ローマ帝国の衰退と混迷を象徴する存在として、後世に語り継がれています。彼の死の真相は永遠の謎として、歴史家の議論を呼び続けるでしょう。

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