ウィスタリア荘

ウィスタリア荘

『ウィスタリア荘』（The Adventure of Wisteria Lodge）は、イギリスの著名な作家アーサー・コナン・ドイルが執筆したシャーロック・ホームズの短編小説の一つです。この作品は、全56篇の短編の中で38番目に発表されたものであり、1908年にイギリスの「ストランド・マガジン」9月・10月号やアメリカの「コリアーズ・ウィークリー」8月15日号に掲載されました。そして、1917年に発表された短編集『シャーロック・ホームズ最後の挨拶』に収められた際に、改めて『ウィスタリア荘』というタイトルが付けられました。

あらすじ

物語は、ジョン・スコット・エクルズという男がエシャーにあるウィスタリア荘に招かれるところから始まります。エクルズは荘の主人であるガルシアから温かくもてなされ、楽しいひとときを過ごします。しかし、翌朝になってエクルズが目を覚ますと、主人のガルシアをはじめ、荘にいた全ての召使いが忽然と姿を消してしまっていました。

その後、ガルシアの遺体がウィスタリア荘から約1マイル離れた場所で発見され、警察はエクルズを疑い始めます。エクルズは無実を証明しようとするものの、その証言が逆に事件の謎を深めてしまいます。地元のベインズ警部は、夕食中に届いた謎の手紙について調査を始め、その内容はまるで暗号のようでした。ホームズはこの手紙が示す方向性から、ガルシアが向かおうとしたのは近くの大きな屋敷であると考え、調査を進めることになります。

ベインズ警部は、ウィスタリア荘に戻ってきたガルシアの召使いである大男を重要な容疑者として逮捕しますが、ホームズはその男が犯人でないことを警視に説明します。今後の展開を見越し、ホームズは不動産屋に電報を送り、大きな屋敷のリストを取り寄せます。

それからホームズはワトスンと共に、怪しい屋敷の監視を行いました。彼らはその屋敷の女家庭教師の部屋に忍び込もうとしますが、屋敷の住人は逃げ出してしまいました。その後、家庭教師は何事かに巻き込まれ、危険な状況に置かれていましたが、見張り役のウォーナーが家庭教師をホームズの元に連れ戻すことに成功します。

年代について

本作の事件は正典では1892年3月に設定されていますが、この年にはホームズがライヘンバッハの滝で死亡したとされることから、年代設定には多くの議論があります。研究者の中には、事件は実際には1890年に発生したのではないかという見解もあり、様々な説が唱えられています。また、河出書房新社版の「ホームズ全集」には、ドイル自身が誤って設定してしまったと語った逸話もあり、1895年の事件とする修正も最近の翻訳では行われています。

『ウィスタリア荘』は、ホームズの鋭い洞察力や論理的思考を駆使して、不可解な事件が解決に至る過程を描いた名作です。この物語は、ドイルが描く探偵小説の醍醐味を堪能できる一篇となっています。

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