ウィラード・メトカーフ

ウィラード・メトカーフ：アメリカ印象派の風景画家

ウィラード・メトカーフ（Willard Leroy Metcalf、1858年7月1日 - 1925年3月9日）は、アメリカ合衆国の画家であり、美術家グループ「テン・アメリカン・ペインターズ」のメンバーとして知られています。彼の作品は、印象派の影響を受けつつも、アメリカの風景を独自の視点で捉えたものが多く、今日でも高く評価されています。

生い立ちと初期の活動

メトカーフは、マサチューセッツ州ローウェルの労働者階級の家庭に生まれました。16歳で絵を描き始め、1876年にはボストンにスタジオを開設。才能を認められ、ボストン美術館の付属美術学校に奨学金を得て入学し、1878年まで学びました。1882年にはボストンの画廊で個展を開き、そこで得た資金を元にヨーロッパへの留学を決意します。

ヨーロッパでの修行時代（1883年-1888年）

1883年9月、メトカーフはヨーロッパへ出発し、1888年まで滞在しました。当初はパリのアカデミー・ジュリアンに入学し、ギュスターヴ・ブーランジェやジュール・ジョゼフ・ルフェーブルに師事しました。その後、イギリスや、多くの画家が集まっていたフランスのブルターニュ地方ポン＝タヴァンで過ごしました。1884年には、後に「テン・アメリカン・ペインターズ」で共に活動することになるジョン・ヘンリー・トワックトマンとパリで出会っています。また、セオドア・ロビンソンなど多くのアメリカ人画家が滞在していたグレ＝シュル＝ロワンでも風景画を制作しました。この頃のメトカーフの作風は、ジャン＝フランソワ・ミレーの影響を受けていたと言われています。さらに、クロード・モネが住んでいたジヴェルニーでも風景画を描き、アルジェリアやチュニジアなどにも足を運びました。

アメリカ帰国後の活動

アメリカに帰国後、ボストンで個展を開き、しばらくフィラデルフィアで活動した後、1890年にニューヨークにスタジオを構えます。しかし、画家としての収入は安定せず、肖像画家、商業美術家、美術教師など、様々な仕事で生活を支えました。1895年には、芸術家村として知られるマサチューセッツ州のグロスターで風景画を描いています。1890年代の終わりには、ジョン・ヘンリー・トワックトマンらが創設した「テン・アメリカン・ペインターズ」のグループ展に参加しましたが、作品数は少なく、貢献は限定的なものでした。

1899年には、友人のロバート・ルイス・リード、エドワード・シモンズと共にニューヨークの役所の壁画制作を手掛けました。20世紀に入ると、タバコ会社の壁画制作の準備でキューバを訪れたり、メイン州に住んで風景画を描いたりしました。1907年には、コーコラン美術館の展覧会で金賞を受賞しています。その後も、ニューハンプシャー州のコーニッシュなどで風景画を描き続けました。

作品の特徴と評価

メトカーフの作品は、印象派の影響を受けながらも、アメリカの自然を独自の視点で捉えた風景画が中心です。光の表現や色彩の繊細さ、そして自然への深い愛情が感じられます。彼の作品は、アメリカ印象派を代表するものとして、今日でも多くの人々に愛されています。

[参考文献]

Chambers, Bruce W., et al., May Night, Willard Metcalf in Old Lyme, Florence Griswold Museum, 2005. ISBN 1-880897-22-9.
Hiesinger, Ulrich W., Impressionism in America: The Ten American Painters, Prestel-Verlag, 1991. ISBN 3-7913-1142-5.

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