ウィリアム・ウォーカー

ウィリアム・ウォーカー：野望と破滅のフィリバスター

ウィリアム・ウォーカー（1824年5月8日 - 1860年9月12日）は、19世紀に中米を舞台に活躍したアメリカの冒険家、傭兵であり、ニカラグアの大統領の座にまで上り詰めた人物です。その生涯は、領土拡張の野望と、それによって引き起こされた混乱と悲劇に彩られています。

若き日の秀才から野心家へ

テネシー州ナッシュビルで生まれたウォーカーは、幼い頃から学問に秀でていました。14歳でナッシュビル大学を卒業後、19歳でペンシルベニア大学で医学の学位を取得。ヨーロッパで医学を学び続ける傍ら、様々な学問に関心を抱いていました。当時のアメリカは、領土拡張の機運が高まっており、ウォーカーもまた、自らの手で国を築きたいという野心を抱くようになります。

メキシコ侵攻とニカラグアでの台頭

1853年、ウォーカーは45人の部下を率いてメキシコ領に侵攻し、バハ・カリフォルニア半島に「ロウアー・カリフォルニア共和国」、次いでソノラに「ソノラ共和国」の成立を宣言するという大胆な行動に出ます。しかし、これはアメリカとメキシコの軍によって鎮圧され、ウォーカー自身も捕らえられますが、すぐに釈放されています。

1854年12月、ニカラグアの自由党から、保守党との内戦終結のための援軍を要請されたウォーカーは、翌1855年6月に57人の部下を率いてニカラグアに上陸。ウォーカー軍は破竹の勢いで進軍し、10月にはグラナダを占領、自由党の政治家パトリシオ・リバスを大統領に据え、自身は軍の最高司令官として実権を掌握しました。

ニカラグア大統領としての政策と失脚

ニカラグアが中米地峡における運河建設の候補地であったことから、ウォーカーはリバスと対立。1856年には自ら大統領選挙に出馬し当選すると、アメリカ南部の制度に倣い黒人奴隷制を復活させ、アメリカ人が土地を取得しやすいように法律を改正、英語を公用語とするなど、ニカラグアをアメリカ南部を中心とした環カリブ海帝国の拠点にしようと試みました。

しかし、こうした動きは近隣諸国の警戒感を招き、中米諸国は軍隊を集結させます。さらに、イギリスやヴァンダービルト財閥もウォーカーに敵対し、ニカラグア国内の反ウォーカー勢力も結集した結果、ウォーカーは追放されることになります。その際、グラナダに放火するという蛮行に及んでいます。

晩年と最期

1857年、ウォーカーはコスタリカ軍を中心とした中米連合軍に降伏し、アメリカ海軍に護衛されて帰国。本国では英雄として扱われましたが、それでも「自らの国を持つ」という夢を諦めきれず、1860年にホンジュラスのトルヒーヨに上陸。しかし、現地の協力を得られず、隣接する英領ホンジュラス（現ベリーズ）のイギリス海軍に捕らえられ、ホンジュラス軍に引き渡された後、1860年9月12日に処刑されました。享年36歳。

関連作品

映画『ウォーカー』（1987年） - エド・ハリス主演。ウォーカーの生涯を史実とフィクションを交えながら描いた作品。

関連項目

マニフェスト・デスティニー

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