ウィリアム・ハミルトン (神学者)

ウィリアム・ハミルトン：20世紀を代表するアメリカの神学者

ウィリアム・ハミルトン (1924年3月9日 - 2012年2月28日) は、アメリカ合衆国を代表する神学者の一人であり、20世紀の現代神学に多大な影響を与えた人物です。彼は特に「神の死の神学」運動の中心的存在として知られており、その思想は現代神学の議論に深く関与しています。

生涯と教育

イリノイ州エバンストンに生まれたハミルトンは、オベリン大学卒業後、第二次世界大戦中はアメリカ海軍に所属しました。その後、ニューヨークのユニオン神学校で神学修士号、スコットランドのセント・アンドリュース大学で神学博士号を取得しています。この過程で培われた幅広い知識と経験は、彼の神学的思考の基盤となりました。

神学的業績と思想

ハミルトンの神学的貢献は多岐に渡ります。1961年に発表した『キリスト教の新しい本質』では、神学の未完成性を強調し、謙虚な姿勢を重視する独自の立場を示しました。この著作は、キリスト教における苦悩の問題への新たな視点を与え、後の神学研究に大きな影響を与えました。

1964年には自伝的な要素を含む記事「木曜日の子供」を発表。ここでは、当時の神学者たちが公民権運動などの社会問題に伝統的な神学では対応できない現実と、正義のために祈りと行動をともにする必要性を訴えています。

ハミルトンは、トマス・アルタイザーとの共著『急進的神学と神の死』(1966年)でも知られています。この著作は、まさに「神の死」という当時大きな議論を呼んだテーマを正面から取り上げ、現代社会における神学のあり方を問うものでした。同時期に雑誌『タイム』が掲載した「神は死んだか？」という記事も、この時代の宗教的・社会的な文脈を反映しています。

さらに同年には論文「新しい楽観主義」を発表。ハミルトンは、新正統主義の衰退の理由を、人間と世界に対する悲観的な見方に求めており、当時のアメリカ社会が悲観主義を克服し、楽観主義へと向かっているとの見解を示しました。T・S・エリオットの死をその背景の一つとして挙げています。

教育活動と晩年

ハミルトンはコルゲイト・ロチェスター神学校で教鞭をとり、その後フロリダ州サラソタの大学、そしてポートランド州立大学で宗教を教えました。1986年まで同大学の学部長を務め、長年に渡り教育活動に貢献しました。2012年、オレゴン州ポートランドで鬱血性心臓疾患の合併症により死去しました。

ハミルトンの影響と現代神学

ウィリアム・ハミルトンの神学思想は、現代神学に多大な影響を与えました。彼の「神の死」に関する議論は、現代神学における重要なテーマの一つであり、現在もなお活発な議論が続けられています。また、彼の社会正義への関与は、神学が社会問題とどのように関わるべきかを示唆するものでした。

ハミルトンの著作は、現代神学を理解する上で欠かせないものとなっています。彼の生涯と業績を学ぶことは、現代社会における神学の役割を考える上で非常に有益です。彼の思想は、単なる歴史的遺物ではなく、現代の私たちにとっても重要な示唆を与え続けています。

参考文献

W・E・ホーダーン(著)『現代キリスト教神学入門』布施濤雄(訳)、日本基督教団出版局1969年
ウィリストン・ウォーカー(著)『キリスト教史4 近・現代のキリスト教』)、野呂芳男・塚田理・八代崇訳ヨルダン社、1986年
ハーヴィー・M・コーン(著)『現代世界[神学]]』[[松田一男]、聖恵授産所、1985年
宇田進『総説-現代福音主義神学』いのちのことば社、2002年

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