ウィリアム・ワーズワース

ウィリアム・ワーズワス（William Wordsworth）

ウィリアム・ワーズワス（1770年4月7日 - 1850年4月23日）は、イギリス文学史において重要な位置を占めるロマン派詩人です。彼は湖水地方に深い愛情を持ち、自然の美しさを純朴かつ情熱的に描写した詩を数多く残しました。同時代の詩人サミュエル・テイラー・コールリッジとは親友であり、1798年に共同で『抒情民謡集（Lyrical Ballads）』を出版しました。この作品は、後に英国ロマン主義の重要な作品として評価されるようになりました。

生涯

初年期：湖水地方での少年時代（1770 - 1787）

ワーズワスは1770年、湖水地方のコッカーマスに生まれました。彼の家族は中流階級のジェントルマンで、父は事務弁護士、母は商人の娘でした。幼少期に両親を亡くし、兄弟たちと共にホークスヘッドのグラマー・スクールで学びました。この時期、自然とのふれあいが彼の詩的感受性を育む重要な要素となりました。

青年期：教育と旅（1787 - 1795）

1787年、ワーズワスはケンブリッジ大学に進学しましたが、学業よりも詩作や自然への関心が強かったため、しばしば湖水地方に戻りました。フランス革命の影響を受けて訪れたフランスでは、政治思想に傾倒しつつも、革命の暴力に疑問を抱くようになりました。この頃、彼はアネット・ヴァロンという女性との恋愛を経て、娘が生まれるも、諸事情によりフランスを去らざるを得なくなりました。

ドロシーとの再会とコールリッジとの出会い（1795 - 1799）

1795年、ブリストルでコールリッジと出会い、彼との交流が始まります。妹のドロシーと共に過ごしながら、彼はモラル・クライシスから脱却し詩作に専念しました。1798年には『抒情民謡集』を発表し、ロマン派詩の第一歩を踏み出しました。この作品は後に英国ロマン主義のマニフェストとも言われるようになります。

グラスミアへの定住（1799 - 1813）

1799年、グラスミアに移り住んだワーズワスは、そこでメアリー・ハチンスンと出会い、後に結婚します。この時期、彼は自然をテーマにした多くの詩を発表し、その中には傑作も含まれています。シンプルながらも深い感情を表現した彼の詩は、広く読み継がれることとなります。

評価と名声（1813 - 1833）

1813年にはロンズデール伯爵の支援を受けて、ライダル・マウントに邸宅を構えます。この頃、彼の詩の評価は高まり、1814年に出版された『逍遥（The Excursion）』は彼の代表作の一つとなります。しかし、時折保守的な立場を取るようになり、若手詩人たちからの批判を受けることもありました。

晩年と死（1833 - 1850）

ワーズワスは晩年、大きな喪失を経験します。愛娘ドーラの死や友人たちの訃報に悲しみを抱えながら、彼は印紙販売官としての仕事を続け、最終的には1884年に桂冠詩人に就任します。その後、80歳で亡くなるまでの間に彼の詩は改訂され続け、『序曲（The Prelude）』も没後に出版されています。

代表的な作品

ワーズワスの主な著作には、上記の『抒情民謡集』や『二巻詩集（Poems in Two Volumes）』、そして自伝的作品である『序曲』があり、多くの名詩が内包されています。特に「ラッパ水仙（The Daffodils）」などは、広く知られた名作となっています。ワーズワスは自然と人間の関係を探り続け、その詩を通じて時代を超えたメッセージを残しました。彼の作品は、今も多くの読者に愛されています。

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