ウィリアム・フランシス・マクベス

ウィリアム・フランシス・マクベス（William Francis McBeth）は、1933年3月9日にアメリカ合衆国のテキサス州ラボックで生を受け、2012年1月6日に78歳でその生涯を終えた、傑出した作曲家および指揮者です。

彼は音楽教育をハーディン＝シモンズ大学、テキサス大学、そしてニューヨーク州にある名門イーストマン音楽学校で修めました。学びの過程では、ハワード・ハンソン、クリフトン・ウィリアムズ、バーナード・ロジャースといった著名な音楽家たちの指導を受け、自身の音楽的基盤を確立しました。

教育者としてのキャリアは、1957年からアーカンソー州のワシタ・バプテスト大学で始まりました。彼はそこで長年にわたり教壇に立ち、後進の指導にあたりました。また、同州リトルロックを拠点とするアーカンソー交響楽団では指揮者を務め、演奏活動にも積極的に関わりました。特に興味深いエピソードとして、1962年に彼が指揮したアーカンソー・オールステート・バンドのテナーサックス奏者の中に、当時15歳だった後のアメリカ合衆国大統領ビル・クリントンがいたことが知られています。

作曲家としてもマクベスは顕著な才能を示しました。1963年には『交響曲第3番』でハワード・ハンソン賞に輝き、その名を広く知らしめました。彼の作品は管弦楽分野にも及びますが、特に吹奏楽の分野で数多くの傑作を生み出し、その名声は確固たるものとなりました。多作な作曲家であり、生涯を通じて多くの作品が発表されています。代表的な吹奏楽作品には、日本でも全日本吹奏楽コンクールの課題曲として演奏され親しまれた「カント」（opus 61, 1977年作曲）や、ハーマン・メルヴィルの大作小説『白鯨』に着想を得た標題音楽『水夫と鯨』（opus 78, 1990年作曲）などが挙げられます。この組曲は「イシュメール」「クィークェグ」「ファーザー・メイプル」「エイハブ」「白鯨」といった小説の登場人物やテーマに基づいて構成されています。

国際的な活動も精力的に行い、客員指揮者としてドイツ、フランス、イタリア、イングランド、スコットランド、アイスランド、カナダ、そして日本など、世界各地から招へいされました。1993年から1994年にかけては、アメリカ吹奏楽指導者協会（ABA）の会長という重責を担いました。会長在任中の1994年3月には、日本吹奏楽指導者協会（JBA）との合同会議（第5回JBA-ABA合同会議）をハワイ州ホノルルで共催するなど、国際的な吹奏楽界の交流と発展にも貢献しました。

音楽理論や演奏法に関する著作も残しており、『バンド音楽の効果的演奏』（Effective Performance of Band Music, 1972年）や『理論の新たな理論』（New Theories of Theory, 1979年）といった書籍は、彼の教育者および理論家としての側面を示しています。特に『バンド音楽の効果的演奏』は日本語にも翻訳され、日本の吹奏楽指導者にも影響を与えました。

ウィリアム・フランシス・マクベスは、その教育活動、指揮活動、そして特に吹奏楽分野における作曲活動を通じて、20世紀後半のアメリカ音楽界、とりわけ吹奏楽界に多大な貢献を残しました。彼の作品は今なお世界中のバンドで演奏され続け、その功績は高く評価されています。

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