ウィリアム・フート・ホワイト

ウィリアム・フート・ホワイト（William Foote Whyte、1914年6月27日 - 2000年7月16日）は、アメリカ合衆国の社会学者であり、都市社会学、特にエスノグラフィー研究における先駆者として知られています。

生い立ちと経歴

ホワイトは上中流階級の家庭に生まれ、幼い頃から経済や社会改革に関心を抱いていました。スワースモア大学を卒業後、シカゴ大学大学院に進み、社会学の博士課程を修了しました。その後、オクラホマ大学で教鞭を執りますが、1943年にポリオを発症し、2年間の療養生活を送ることになります。1944年には一時的にシカゴ大学に戻り、研究活動を再開しました。1948年からは、コーネル大学のニューヨーク州産業労働関係学部(The New York State School of Industrial and Labor Relations)で教鞭を執り、後進の育成に尽力しました。

研究内容と業績

ホワイトの最も重要な業績は、ボストンのイタリア人コミュニティでの参与観察を基に著した『ストリート・コーナー・ソサエティ』（1943年）です。この研究は、都市社会学におけるエスノグラフィー研究の古典的名著として高く評価されており、ホワイトをこの分野のパイオニアとしての地位を確立しました。

『ストリート・コーナー・ソサエティ』では、ボストンのイタリア人コミュニティに数年間住み込み、地域住民との交流を通じて、彼らの日常生活、社会構造、人間関係を詳細に記述しました。従来の社会調査とは異なり、ホワイトは自らがコミュニティの一員となることで、住民の視点から社会現象を理解しようと試みました。この参与観察の手法は、後の社会学研究に大きな影響を与え、質的研究の重要な手法として定着しました。

また、ホワイトは産業社会学の研究にも貢献しており、労使関係や組織における人間関係についても研究を行いました。彼は、労働者と経営者の間のコミュニケーションや協力関係を重視し、産業平和の実現に向けた提言を行いました。

著作

ホワイトは数多くの著作を発表しており、以下はその代表的なものです。

Pattern for industrial peace. Harper & Bros., 1951.
『労使が手を握り合うまで : 産業平和の典型』石田磯次訳, 日刊労働通信社 1959年
Man and organization: three problems in human relations in industry. Homewood, Ill.: R. D. Irwin, 1959.
『人間と組織 : 産業における人間関係の三つの問題』桜井信行訳, ダイヤモンド 1961年
Making Mondragon: the growth and dynamics of the worker cooperative complex. ILR Press, 1988.
『モンドラゴンの創造と展開：スペインの協同組合コミュニティー』キャサリン・ホワイトと共著, 佐藤誠・石塚秀雄・中川雄一郎訳, 日本経済評論社 1991年
Street Corner Society The University of Chicago Press, 1993.
『ストリート・コーナー・ソサエティ』奥田道大・有里典三訳有斐閣 2000年

遺産

ウィリアム・フート・ホワイトは、その研究と教育活動を通じて、社会学の発展に大きく貢献しました。彼の参与観察によるエスノグラフィー研究は、都市社会学や質的研究の分野に大きな影響を与え、多くの研究者にインスピレーションを与え続けています。

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