ウィリアム・プレストン (海軍長官)

ウィリアム・バラード・プレストンの生涯

ウィリアム・バラード・プレストン（William Ballard Preston, 1805年11月25日 - 1862年11月16日）は、アメリカ合衆国の政治家であり、第19代アメリカ合衆国海軍長官を務めた人物です。彼の生涯は、アメリカ合衆国の激動期と深く結びついており、その政治的立場は時代とともに変化していきました。

生い立ちと教育

1805年、プレストンはバージニア州スミスフィールドで生まれました。1821年にハンプデン＝シドニー大学に入学し、文学と法律を学びました。1824年に同大学を卒業後、さらにバージニア大学で法律を修め、1826年に弁護士としての資格を得ました。

政界への進出

若き弁護士として活動を始めたプレストンは、間もなくホイッグ党に入党し、政治の世界に足を踏み入れました。1830年にはバージニア州下院議員に選出され、政界でのキャリアをスタートさせました。1831年の会期では、奴隷制廃止を訴える活動にも参加しましたが、その後は一時的に弁護士業に復帰し、約8年間を民間人として過ごしました。1840年、再び政治の世界に目を向け、州上院議員に選任されました。その後、1844年には州下院議員に戻り、1846年には連邦下院議員に選出されるなど、着実に政治家としての地位を築いていきました。

海軍長官としての活躍

1849年、ザカリー・テイラー大統領はプレストンを海軍長官に指名しました。海軍長官としてのプレストンは、アメリカ合衆国の西方拡張とカリフォルニアの獲得に向けてアメリカ海軍を指揮しました。彼の指導の下、アメリカ海軍は太平洋に進出し、極東地域での制海権を確立するとともに、中国との通商地域を拡大させました。また、プレストンは通商のさらなる拡大を目指し、帆船から蒸気船への転換を推進し、艦砲の改良にも積極的に取り組みました。

しかし、1850年にテイラー大統領が死去すると、後任のミラード・フィルモア大統領は閣僚を総入れ替えし、プレストンは海軍長官を辞任、政界から一時的に退くことになりました。

海軍長官退任後

海軍長官退任後、プレストンは弁護士業を再開しました。1858年には、バージニア州ノーフォークとフランスのル・アーヴル間の商用航路確立の交渉役として派遣されるなど、高い評価を得ました。特にフランスとの関係に関する業務に多く携わり、その活動は南北戦争勃発まで続きました。

南北戦争と連合国への参加

1860年の大統領選挙でエイブラハム・リンカーンが勝利すると、合衆国南部諸州では連邦からの離脱を求める声が高まりました。バージニア州もその影響を受けましたが、当初は均衡状態を保っていました。しかし、南北間の緊張が高まるにつれて、バージニア州でも連邦離脱が現実的な問題として浮上してきました。1861年2月13日、連邦を離脱した7州によってアメリカ連合国臨時議会が開催されると、バージニア州でも連邦離脱に関する議論のための会議が招集され、プレストンはバージニア州の代表として選出されました。

1861年4月12日、サムター要塞への砲撃が開始されると、連邦離脱を議論する会議における保守的な勢力は弱まり、いよいよ脱退が不可避な情勢となりました。4月16日、プレストンは非公開の会議において連邦離脱を支持し、その結果、88票中55票の賛成によりバージニア州の連邦離脱が決定しました。

その後、プレストンはバージニア州からアメリカ連合国上院議員に選出され、死去するまで連合国議員として活動しました。

死と遺産

1862年、プレストンは故郷であるバージニア州スミスフィールドで死去し、個人墓地に埋葬されました。彼の死後、その功績を称え、アメリカ海軍において駆逐艦ウィリアム・B・プレストンにその名が付けられました。

プレストンの生涯は、奴隷制を巡る問題やアメリカ合衆国の分裂という、激動の時代を映し出す鏡のようなものでした。彼の政治的変遷は、当時のアメリカ社会の複雑さと矛盾を物語っており、歴史を研究する上で貴重な事例となっています。

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